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01話:運命の毒ナイフ

■■魔族の襲撃


その日、私とモコモコは街に買い物に来ていた。一ヶ月後、私とモコモコは結婚する。その準備をするため、ささやかな幸せを確かめるためだ。


買い物を終え、食事も済ませた私たちは、馬車に乗ってアンス村へと向かっていた。平原を通り、林の中へと入っていく、いつもの帰り道・・・・・


「ムスイ、楽しかったね」

「ああ。しかし、まさかあそこに並んでいた服が全てモコモコが作ったものだったとはね」

「おばあちゃんたちと毎日作ってるんだもん」

「入り口の一番いいとこに飾ってあったよ。よほど評判がいいんだろうね」

「フフフ」


モコモコは照れくさそうに笑った。


馬車が林の中に入りしばらく入った、その時だった。私は違和感に気づく。


「モコモコ・・・・・魔族がいる」

「え?」


周囲を探る。数は前方3体、後方7体の計10体。身を隠してはいるが、私にはハッキリとわかる。


「剣を持って。戦えるね」

「うん!」


私はそんなに心配していなかった。モコモコは強い。そこいらの冒険者とは比べ物にならないほどに。魔族が束になろうとも、後れを取ることはない。――そう、信じていた。


私は馬車を止め、地面に降りる。馬車と馬をつないでいた紐を斬り、馬の尻を叩いた。


「行け!」

「ヒヒ~ン!」


馬は全速力で村の方角へと駆けて行った。


さてさて、これから魔族討伐だ。



■■モコモコ、毒のナイフで刺される


馬車をおり、馬を行かせたことから、魔族たちも理解したのだろう。もはや隠れている意味などないことを。


前方に3体「剣2、魔法1」。

後方に7体「剣5、魔法2」。


「モコモコ、前方3体を頼む。後方7体は私がやる。準備はいいか?」

「うん、大丈夫!」


私は馬車をつかむと、そのまま前方へと放り投げた。


「ギギ!」


馬車の衝突による重い衝撃音。魔法使いの魔族に直撃し、体ごと吹き飛ぶ。


前方は残り「剣2体」に減った。


「ギギギ~!」

「ギ~! ギ~!」


咆哮とともに、魔族たちが一斉に距離を詰め襲い掛かってくる。


後方2体が、同時に炎の魔法を放った。


私は剣を振る。一度に2つの火球をはじき消滅させた。


間を置かず剣士5体が同時に斬りかかってくる。


私はそれぞれの剣を受け止め、そのまま押し返した。反撃の斬撃はすべて、相手の一撃をはるかに上回る技術とパワーで。


魔族たちは力の差を悟ったのだろう。明らかに動揺し、後退する。


5体同時とはいえ、私にとっては取るに足らないレベル。本気で薙ぎ払えば、一撃で全員を両断できる。


しかし、そこまでする気にはなれなれない。適当にあしらい、逃げる隙を与えれば、それで十分だ。


そんなことを考えながら、私は後方のモコモコに視線を向けた。


・・・・・その瞬間だった。


一体目の魔族が、激しい斬撃を放つ。モコモコは余裕をもってそれを受け流していた。


しかし・・・・・


その背後から、二体目が密かに距離を詰めていた。ナイフを構え、確実に急所を狙い向かってきている。


モコモコは気づいていない。目の前の敵に、意識を奪われている。


(狙いは、最初から・・・・・)


明らかに、私が相手をしている魔族よりも強い。狙いは私ではなかった。最初から、モコモコを仕留めるつもりだったのだ。


(まずい!)


私はモコモコの元へと駆け出した。


・・・・・だが、間に合わない。


魔族の剣が、モコモコの左脇腹を深く突き刺さる。


「カハッ……!」


時間が、止まったかのように感じられた。


絶対に起こしてはならない光景が、目の前にある。モコモコの体が弾かれるように大きく折れ曲がり、そして、地面に叩きつけられる。


「モ、モコモコ!!」


怒りが、思考を焼き尽くした。


次の瞬間、私の体の奥から光が溢れ出すかのように強い光を放つ。そして、放たれたはずのそれは、逆流するように体内へ戻り・・・・・、私自身を、強く、強く満たしていった。


その光景を前に、魔族たちは息を呑み、たじろぐ。


私はモコモコの方に駆け出しながら、後方の魔族へと手を向けた。


「フレア!」


炎が半円状に爆ぜる。魔族も、木々も、そこにある全てが存在ごと焼き払われた。


それを見て、モコモコを襲った二体が逃げ出そうとする。


・・・・・逃がすものか!


「フレア!」


圧倒的な炎が、魔族たちを跡形もなく消し去った。


戦いは、終わった。


だが・・・・・


(いや、今は、どうでもいい、まずはモコモコだ)


私は刺されて倒れているモコモコの元へと駆け寄った。


「モコモコ、大丈夫か?」

「う・・・・・うん・・・・・」


声は弱いが、意識はハッキリしている。


「少し我慢してくれ」


私はモコモコの腹部に突き刺さったナイフを、慎重に引き抜いた。


「うっ・・・・・!」

「ああ、痛いよね、もう少しの辛抱だよ」


そう言って、横腹に回復魔法をかける。


――だが。


傷は、ほとんど塞がらなかった。


「そんな・・・・・どういうことだ!?」


考えられないことだった。回復魔法が効かないだなんて今まで一度も起こったことがない。なぜこんなことが・・・・・。


「私がやってみる」


モコモコは自分自身に回復魔法をかけた。傷口はみるみる塞がっていく。


ひとまず命に別状はない。その事実に、胸をなで下ろす。


しかし・・・・・


(なぜ、私の魔法だけが・・・・・?)


私は地面に落ちていたナイフを拾い上げた。刃に、わずかな違和感を覚える。


「これは・・・・・毒か」


剣に毒が塗られていることはよくあること。しかし、解毒魔法もあるため、現在ではさほど意味を持たない。


「解毒魔法を使おう」

「うん、私がやる」


モコモコはいつになく真剣な表情で解毒魔法をかけた。


まさかとは思うが・・・・・


私は紫色になっているモコモコの横腹を見つめる。・・・・・不安は的中した。アザが消えていない。


「ムスイ、なんだかおかしい、おかしいよ・・・・・」

「・・・・・」


言葉が出てこなかった。


私も解毒魔法を放つ。変化は、無い。


「・・・・・あり得ない」


胸の奥が、ざわつく。一体、何が起こっているんだ・・・・・


「はぁ・・・・・はぁ・・・・・」


モコモコの呼吸が少し荒い。ありえないこの状況に、モコモコも不安を感じている。


(まずい・・・・・本当に、まずい)


私は考え、結論を出す。


「モコモコ、とりあえず街に戻ろう。街に行けば専門の医者がなんとかしてくれるはずだ」

「う、うん・・・・・」


私はモコモコを抱き上げ、そのまま街の方向へと走り出す。


「苦しくない?」

「うん、大丈夫」


モコモコは思ったよりも元気そうだ。しかし、この毒は一体・・・・・。私は言い知れぬ不安に包まれていた。

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