9.作戦成功
公爵との和やかな会話回です
その後、国王と王妃はアンネ達に謝罪をした。今後の事が全て決まり次第、また改めて謝罪をするという話になった。もう城にいる理由は無くなったので、アンネ達は公爵家に戻る事にした。
ヴィクトルはその間何も言わずに俯き、アンネを一度も見る事は無かった。
「…お父様、ご迷惑をおかけしました。本当にありがとうございました。」
帰りの馬車の中で頭を下げるアンネに、トーマスは首を振った。
「気にするな、お前は何も悪くない。全てあの馬鹿王子のせいだ。陛下達もこれから大変だな…。」
「…そう、ですね。」
トーマスの言葉にアンネも頷いた。ヴィクトルがどんな罰を受けようが自業自得としか言えないが、そんな一人息子を持ってしまった国王達に同情してしまう。アンネとしては、ヴィクトルに王位を継いで欲しくないと思っているが、国王達はどう考えているのだろうか。
それともう一つ、マリー・リンネ男爵令嬢をどうするのか。この婚約解消の責任が全くないとは言えないだろうが、どれほどの罰が与えられるかは見当がつかない。流石にマリーがヴィクトルの婚約者となって、王子妃になる事はまずあり得ないと思うのだが…。
「陛下達の事を考えれば、婚約解消の方が表向きには平和に済むのだろうが…謝罪内容によっては婚約破棄として公表するように抗議させてもらうつもりだ。」
トーマスはそう言ってアンネを見た。世間的な響きとして婚約解消であれば、お互いが話し合った上での合意としての印象を与える事が出来なくもない。しかし、婚約破棄であればどちらかの有責であり、非がある事を世間に知らしめる事になる。今回の場合は勿論、非があるのは王家側になる。
「お父様、ありがとうございます。でも、もう側妃になる事も、再び婚約が結ばれる事も無くなりました。それに、陛下の言葉のお陰でヴィクトル様ももう、変な思い込みで私を説得しようとは考えないと思います。それだけで充分ですよ。」
ヴィクトルの“アンネは深くヴィクトルを愛している”という思い込みが、そもそも間違いであるとヴィクトルに理解して貰う事は出来なかった。しかし、国王のお陰で“昔は深く愛していたが、今は愛していない”と認識したと思う。
まだアンネがヴィクトルを愛していると思い込んでいたら、性懲りも無くアンネを説得しようとしてきたかもしれないが、もうそれはないだろう。“アンネがヴィクトルに恨まれている”というアンネの思い込みについて、誤解であると話をしてくるかもしれないが、ヴィクトルの将来の為にアンネをもう利用出来ない事を分かってさえいるなら構わないと思った。
晴れやかな笑顔を見せるアンネに、トーマスも納得した様子で頷いた。
「それにしても、よくこんな作戦を思いついたなアンネ。」
トーマスの言葉に、アンネは少し照れたように笑った。
“ヴィクトルに恨まれている、復讐の為に側妃にされようとしていると思い込んでいる”という演技をして、ヴィクトルにやり返す今回の作戦。アンネ自身も自分で目茶苦茶な事を言っているという自覚があった。しかし、トーマスに国王へ手紙を書いて貰う事によって、目茶苦茶な事でもアンネ自身は本気で思っているのだと、国王達に信じて貰おうと考えたのだ。
手紙の内容は、アンネがヴィクトルに婚約解消と側妃になるように言われた事、ヴィクトルに恨まれているとアンネが感じている事を記し、トーマスは話を聞いたときは信じられなかったが、徐々に不安を感じて翌日に手紙を出した…という事にして貰った。
国王は今日の話し合い以前に手紙を読んでいた筈だ。ヴィクトルが包み隠さずダメっぷりを話してくれた事もあるが、手紙のお陰で事が順調に進んだのは間違いない。
「もしかして、王妃教育で学んだ事なのか?」
「いえいえ、そんなまさかっ!」
少し悪戯っぽく聞いてきたトーマスに、笑いながらアンネは否定する。しかし、アンネ自身も自分がこんな作戦を思い付けるなんて思ってもみなかった。
「陛下の今後の決定がどんなものになるかは分からないが、もうお前が王家に巻き込まれる事はない筈だ。」
トーマスの言葉にアンネも満足そうに頷いた。
終盤に近づいてきました。何話で終わるかはっきり決まってませんが15話も続かない予定です。
読んで下さりありがとうございました!




