14.経験と反省
マリーとヴィクトルの別れ話です
アンネの疑問を察したように、ヴィクトルは話し始めた。
国王と話をしたヴィクトルは、マリーと話をする為にリンネ男爵家に向かった。マリーは男爵に叱られたらしく、部屋で大人しくしていたそうだ。マリーと会った時はとても嬉しくて、お互いを抱きしめ合った。しかし、ヴィクトルが今後の話をしようとすると、
「ヴィクトル様、私には王妃教育は無理です!! 王族の難しい話もついていけません!!」
いきなりマリーにそう言われた。アンネの王妃教育の話がマリーには衝撃的だったのだろう。それと生徒会室でのヴィクトルとアンネの会話の応酬に、何か思う事があったのかもしれない。
ヴィクトルはマリーを落ち着かせるように、マリーは王子妃だけでなく、側妃にもなれなくなった事。そしてヴィクトルが婿入すれば、婚約出来る事を伝えた。
「えっ…ヴィクトル様は王子様じゃなくなるんですか?」
「…そうなるね。でも、僕達は結婚できるよ。」
勿論ヴィクトルは王位を捨てたくない。でもマリーと一緒に居たいと思う気持ちも本当だ。マリーの喜ぶ顔をみれば、王位を諦められるかもしれないと思っていた。
「ヴィクトル様が王子様じゃなくなるなんて、嫌です!!」
しかしマリーは喜ばなかった。予想外の反応にヴィクトルが固まっていると、マリーは暫く悩む素振りを見せた。そして急に明るい顔をした。
「あっ、そうだわヴィクトル様! ヴィクトル様が国王になった後に、私を側妃にして下さい! 私、それまで待ちますから!」
「えっ、側妃? …そんな、それじゃあ僕には正妃がいるんだぞ、それでいいのか?!」
「だって、私に王妃は無理ですもの…だから、我慢します。」
残念そうに、けれど健気な様子でそう答えるマリーだが、そもそもマリーは王家に入る事が禁じられている。側妃になる事は出来ない…マリーにも言った筈なのだが。
「マリー、君は側妃にはなれないよ。王家の一員にはなれないんだよ。」
「そんなの、ヴィクトル様が国王になってから変えれば良いんですよ!!」
一度定めた規則を変えるなんて簡単じゃないが、国王になったヴィクトルが命じれば出来るかもしれない。だがヴィクトルの頭の中にあったのは、希望ではなく疑問だった。
「…君は、僕が男爵家に婿入するのが嫌なのか? 王子でなければ駄目なのか?」
「…そ、そういう訳ではないですけれど。」
曖昧な濁すような返答に、ヴィクトルは無表情になった。ずっと婚約者として過ごしてきたアンネと婚約解消をしようと思えるほど愛していたのに、“王子でない自分には興味がない”と言わんばかりのマリーの言葉と態度が、ヴィクトルの中の強かった筈の愛を、消していくのを感じた…。
その後、ヴィクトルはもう会う事はないと別れを告げて男爵家を去った。マリーが何かを言っていたが、振り返る気も起こらなかった…。
◇◆◇
「…僕は、王位を捨てたくない。だから王位を捨てずに結婚する事を考えてくれるリンネ嬢に有難いと感じる筈だった。でも、王子でないのなら結婚したくないのだと分かって、彼女への愛が冷めてしまったんだ。」
ヴィクトルは、身分など関係なく愛してくれていると思っていたのに、王子という身分を愛していたと感じてしまったのだろう。マリーの本心がどうなのかはアンネには分からないが、マリーの態度はヴィクトルの愛を冷めさせてしまったのだ。
「だから、その…そんな事で、なんて思わない。アンネの言葉が嘘だと思いたいけど、そうじゃないんだって分かるよ。僕の学園での態度は、確かに不誠実だった。」
ヴィクトルは苦笑いしながらそう言うと、再び頭を下げた。
「…愛情のなくなった男に、王子妃の座を勝手に解消されて側妃になれだなんて、本当に不快な思いをさせてしまった。本当に、ほんっとうに、申し訳なかった!!」
アンネは何度目かになるヴィクトルの謝罪の言葉に、ようやく胸の中のモヤモヤが無くなっていくのを感じた。
娘の様子を安心したように、母親は見ていた。
次で最後の話になります。丁度15話になりました 笑
ここまで読んで下さりありがとうございます!
誤字脱字報告をしてくださった方々、とても助かりました。




