13.王子に理解させる
王子に思い込みだった、と伝える回です。
「…私は王子妃に、王妃になりたいとは思っておりません。」
「…本当か?」
「はい。実は私、3日後に隣国へ留学するんです。今まではヴィクトル様の婚約者だったので考えた事もなかったんですが、他の国で勉強するのも悪くないなと思いまして…。」
アンネの返答にヴィクトルは驚いた顔をした。ヴィクトルが今後、アンネに何もしない保証がなかったので、この国を離れる口実として考えた。しかし、今までこの国以外の場所に行った事がなかったから行ってみるのも面白いかもしれない、とアンネは思ったのだ。
ヴィクトルはどこか安心したような、でも少し複雑そうな様子を見せた。
「そうか…分かった。」
「私が王子妃になりたいと答えたら、王位を捨てるつもりだったんですね。」
アンネの言葉にヴィクトルは頷いた。そんなヴィクトルにアンネは警戒を解いて、改めてヴィクトルに向き合った。
「ヴィクトル様、貴方が私を恨んでいないと、信じます。」
「っ、ほ、本当か!!?」
「…はい、思い込んでしまってすみませんでした。」
アンネの思い込みは演技であって、ヴィクトルがアンネを恨んでいるとは欠片も思ってない。しかし、演技だったと説明して拗れる可能性も考えた為、誤解が解けたという事にした。シナモンもその考えを察して何も言わなかった。
「よ、良かったよ。誤解が解けて本当に良かった、うん、本当に良かった…。」
「…ヴィクトル様、私からもお話があります。」
とても安心して“良かった”と繰り返すヴィクトルを暫く見つめたアンネは口を開いた。
「ん? なんだい?」
「“愛する人の為なら身分を捨てられる”、つまり何でも出来る、という考えが間違っていたとヴィクトル様は言いましたね。はい、私も同意します。人によって許容出来る事には差があります。それに自分は我慢出来ても、相手も我慢出来るとは限りません。」
「…あぁ、そうだね。」
「ですが、ヴィクトル様の場合はもう一つ間違いが、いえ…思い込んでいた事があります。無礼を承知でお話ししますが、私は貴方から婚約解消をお願いされた時、貴方の事を愛しておりませんでした。」
「…へっ?!」
ヴィクトルはとても驚いた顔をしてアンネを見た。
「リンネ嬢との距離感を考えて欲しいとお願いした時、貴方は聞いて下さらなかった。そして注意をしようとしてくれた生徒達に反論する姿を見て、段々と愛情が、なくなってしまったのです…。」
ヴィクトルは何とも言えない顔をして、何も言わずにずっとアンネを見ている。そんなヴィクトルの様子に少し不安を覚えたアンネは、婚約解消の腹いせに嘘を言っている、と誤解されないように、言葉を続けた。
「そんな事で、とお思いになっているかもしれませんね。でもそれで、今まで婚約者として過ごして育んできた愛情は消えました。私は、冷たいのかもしれませんね。」
「…いや、何となく分かるよ。僕も、似たような経験をしたからね。」
ヴィクトルの返事に、アンネは意外そうな顔をした。ヴィクトルは気不味そうな顔をしながらも、少し笑った。
「…リンネ嬢と別れた時、そんな感じだったんだ。」
次回は影の薄くなった男爵令嬢と、ヴィクトルの2人がどうなったのか分かります。
ここまで読んで下さりありがとうございます。次回ももし良ければ読んで頂けると嬉しいです(*^^*)




