12.卒業と謝罪
久しぶりに主人公登場します。ダメ王子とのお話回です。
「卒業おめでとうございます、テレーゼ公女!」
「えぇ、皆さんもおめでとうございます。」
ヴィクトルとの婚約解消から数日後、アンネは卒業式の日を迎えた。卒業生も在校生も涙ぐんだり、何かの話に夢中になったりと何時もよりも騒がしい雰囲気となっていた。しかしその生徒達の中に、ヴィクトルとマリーの姿がなかった。
婚約解消は卒業後、翌日に発表される予定だ。しかし、ヴィクトルの王位継承権の撤回と、ペディア侯爵令息に王位継承権が与えられるという話は、テレーゼ公爵家を含め一部の高位貴族にのみ伝えられた。今後暫くはこの話は公にされず、様子を見て発表するらしい。
リンネ男爵家からは慰謝料を支払われ、謝罪された。マリーは修道院へ送られたと噂で聞いた。学園でのヴィクトルとマリーの行いは広まっているので、周りは疑問に思う事もなく、そして話題に上がる事もなかった。
アンネは二人の事をもう、何とも思わない…とまではいかず、思う事はあったので少し清々としていた。晴れやかな笑顔で友人達と語り合い、卒業式を終えた。
◆◇◆
「アンネ、馬鹿王子がお前と話をしたいそうだ。」
公爵家に帰宅すると、トーマスが不機嫌そうな顔でアンネに言った。昼間に王家から手紙が届いたそうだ。
「手紙を出したという事は、陛下が許可を出したと言う事だ。あの話し合いの時よりはまともになったという事かもしれないが…アンネ、お前はどうしたい?」
思い込みの激しかったあのヴィクトルには、何を話しても意味なんてないと思っていた。でも少しでもまともになったのなら、今度は話を聞いてくれるかもしれないとアンネは思った。
「…ヴィクトル様の話を、聞きたいです。」
アンネがそう言うと、トーマスは仕方がないといった様子で頷いた。特に予定もなかった為、ヴィクトルに用事がなければ今夜話をしても良いと王家に返事を書いて出すと、今夜話をしたいと返事が返ってきた。
◆◇◆
「…テレーゼ公爵、公爵夫人、テレーゼ公女、話す機会をくれて本当にありがとう。」
夜になり、ヴィクトルが従者を連れて公爵家にやってきた。トーマスが立ち会おうとしたが、ヴィクトルが変な事を言ったら口を挟まない自信がなかった。トーマスには近くの部屋で待機してもらう事にして、シナモンと護衛が2人同席する事になった。ヴィクトルの方は従者をつけず、一人で部屋に入った。
「…話したい事がいくつかあるんだが、まず婚約解消の事を謝らせて欲しい。テレーゼ公女、本当にすまなかった。」
「……。」
深々と頭を下げて謝るヴィクトルを、アンネは何も言わずに見つめた。ヴィクトルは頭を上げると話を続けた。王位を継がないなら王になる者を支えるように言われた事。かつてアンネに言った事がどれだけ酷い事だったのかを知った事。愛する人の為なら身分を捨てるに決まっているという考えが、愚かな思い込みであった事。そして、
「…まだ、信じてもらえないかもしれないが、僕はテレーゼ公女を恨んでなんていない。だから、その…もし、君が王子妃に、未来の王妃になりたいと思っているなら、僕の事は気にしなくて大丈夫だから。」
「…それは、また貴方の婚約者になれと言う事ですか?」
アンネは怪訝そうな顔をした。シナモンも何も言わないが眉間に皺を寄せた。王命でアンネはもうヴィクトルと婚約は出来ないのだ。まさかアンネに、王命を撤回させるように説得させようと考えているのではないかと警戒する。
「…いや、違うよ。もし君が王子妃になりたいなら、ペディア侯爵令息と婚約すれば良いと思ったんだ。兄弟のどちらになるかは分からないけど。」
ヴィクトルの言葉にアンネ達は驚いて目を見開いた。ヴィクトルは気不味そうに笑った。
「僕のせいで君の今までの努力を無駄にさせてしまったけれど、まだ君は王子妃になれる機会がある。ただ、僕は王を支えるように言われたから、君が王子妃になれば城で僕と関わる事になるだろう。僕に恨まれていると不安に思っていては、王子妃になれないと思ってね。」
「…あの、ヴィクトル様は王位を捨てる事にしたのですか?」
マリーは修道院に行った筈だ。マリーと結婚しないのに、王位を捨てると言っているのだろうか。
「…いや、僕は王を継ぎたいと思っている。王位を捨てたくない…でも、僕は過ちを犯した。だから、罰を受けないといけない。」
アンネは王妃教育を受けた公爵家の令嬢だ。もし、アンネがペディア侯爵令息と婚約したら、ペディア令息を支持する声が強まるだろう。ヴィクトルにとってそれは、自分の立場を不利にするだけだ。いや、そもそもアンネが王子妃なれば、ヴィクトルは王になれなくなる…。
つまり、アンネの返答次第でヴィクトルは王位を捨てるか否か、決めると言っているのだ。
「テレーゼ公女、君はどうしたい?」
ヴィクトルは少し緊張した面持ちで、アンネを見た。
次回も王子との話が続きます。15話も書かないと思っていましたが長引くかもしれません。
ここまで読んで下さりありがとうございました。




