11.ヴィクトルへの罰
ヒロイン不在のままです。ヴィクトル反省回です。
「お前が王の座を捨てるのならば、リンネ男爵令嬢との婚約を認めよう。男爵家に婿入りするが良い。」
あっさりと言い放つ国王の言葉に、ヴィクトルは一瞬呆けたが、すぐに慌てた様子で反論した。
「なっ、待って下さい!! 私は父上、貴方のたった一人の息子ですよ!? 王になる人間は私しかいないではありませんか!?」
「当然考えておる。ペディア侯爵家には2人息子がおる。そのうちの1人に王位継承権を持たせようと思っておる。」
「っ、ペディア侯爵家…!」
ペディア侯爵家の侯爵は、国王の弟である。侯爵はペディア侯爵家の長女に惚れて侯爵家に婿入した。つまり、2人の息子には王家の血が流れている。
「2人共優秀であると聞いておるからな、誰も文句は言うまい。」
「い、いや待って下さい!! 私は、私は王になる為に努力してきたのですよ?! そんな急に…。」
「リンネ嬢と婚約したいのだろう? 王位の為だからと言って、愛するリンネ嬢を側妃になんて出来ないだろう? それにさっきも言ったがリンネ嬢は今回の件の原因、罪人でもある。そんな彼女を側妃に、王家の人間にする事は許さない。」
ヴィクトルは何も言えずに黙り込んだ。マリーと婚約するには、ヴィクトルが王の座を捨てるしかないと嫌でも理解してしまった。
「それともう一つ、お前が王の座を捨てたら、新たな王となるものを補佐し、支えるようにな。」
「っ、な、なぜですか!?」
ヴィクトルは怒りを滲ませる。王の座を奪われるのに、何故奪った者を支えなければならないのだと言うように。
「何を言っているのだ? お前は前にテレーゼ公女に言っていただろう。王として学んできた教養を無駄にさせない為だ。それが出来ないのならば、リンネ嬢との婚約は認めない。」
国王の言葉に、ヴィクトルは顔色を悪くさせた。
「愛するリンネ嬢と婚約出来るのだ、何も問題ないだろう?」
ヴィクトルは何も言えずに俯いてしまった。そして、自分が呟いた言葉が頭の中をよぎった。
(王妃の座なんかよりも僕の傍に居られる事の方が大事に思うに決まっている。)
ヴィクトルは何も分かっていなかった。王になる為にしてきた努力を、時間を奪われてしまう事がどんなに腹立たしくて、悲しい事なのか…。自分は今、王位よりもマリーを優先する事が出来ないのに、アンネは自分を優先させると思っていた…なんて、愚かだったのだろう。
「もう一度言うがヴィクトル、お前が王の座を譲る気がないのならば、リンネ嬢との婚約は認められない。それともう一つ、リンネ嬢との婚約の有無に関わらず、私が王位を退く時にお前の人格と行いが王に相応しくないと判断した場合は、ペディア侯爵令息に王位を渡す。つまり、後はお前次第だ。」
今後はペディア侯爵令息とヴィクトルに平等に王位継承権を与えて、最終的にどちらに王を継がせるかを決める。ヴィクトルの王位継承権の撤回、これがヴィクトルへの罰なのだろう。
「…はい、申し訳ありませんでした。」
ヴィクトルは顔色を悪くさせながらも、しっかりと国王の顔を見て返事をした。そんなヴィクトルを見て国王はため息を吐いた。
「ふぅ…、リンネ嬢との婚約をどうするのかは、リンネ嬢と話し合ってから決めて良い。」
「…はい。」
ヴィクトルは深く頭を下げて謝罪した。
ヴィクトルへの罰に対して様々な意見があると思いますが、王位継承権の撤回にしました。アンネは思い込み作戦の仕返しをしましたが、ヴィクトルには思い込みをした自覚がありませんでした。でも、愛する人の為なら地位を捨てられるという身勝手な思い込みでアンネを傷つけた事は、国王に同じ様に返されてしまい、因果応報となりました 笑
ここまで読んで下さった方、誤字脱字報告して下さった方、いつもありがとうございます。




