伝説の巨大にんじんの秘密
戦いの後の夕暮れ。
カピパランドの温泉地帯には、あたたかい湯気が立ちのぼり、
ほのかは温泉に浸かりながら、ぼんやりと空を眺めていた。
カピバラたちも周囲でプカプカとお風呂タイムを楽しんでいる。
「ふぅ……。さっきはどうなるかと思ったよ。」
ほのかがため息をつくと、にんじん騎士団のリーダー、チビカピがぽてぽてと寄ってきた。
「プリンセス、お疲れさまでした! にんじんの杖、かっこよかったですぞ!」
「ありがとう、チビカピ。でも私、本当にこの国を守れるのかな……。」
ほのかはお湯の中で膝を抱え、小さくつぶやいた。
その時、湯船の向こうから、王様カピの声がふわりと届いた。
「プリンセスよ……そなたには、もっと知るべきことがあるのだ……。」
湯気の向こうで、王様カピが半分目を閉じたまま、
まるで夢の中のように、語り始めた。
「伝説の巨大にんじんは、この国の命。
はるか昔、カピパランドを癒しの地に変えたのは、そのにんじんの力だったのだ。」
「にんじんが……この国を作った?」
「そうじゃ……その力は、選ばれし者──モフモフの心を持つ者だけが引き出せる。
そして、プリンセスよ……お前こそが、その選ばれし者なのだ。」
「ええっ!? 私が!?」
ほのかはびっくりして立ち上がり、お湯がバシャーンと弾け飛んだ。
(※周囲のカピバラたちは、ぽやっとした顔で拍手している。)
「だが……。」
王様カピの声が少しだけ低くなり、湯気がすうっと冷たくなる。
「伝説の巨大にんじんには、恐ろしい影が宿っておるのだ……。」
「影?」
「それはかつて……カピパランドに封じられた、
“ワニ帝国の呪い”──。」
カラン…と、ほのかの手からにんじん杖が滑り落ち、湯船に浮かんだ。
その杖の先端が、一瞬だけ青白い光を放つ。
「呪いって……どういうこと!?」
「プリンセス……覚悟を決めなされ。」
王様カピが、湯気の中で目を開き、じっとほのかを見つめる。
「カピパランドを守るためには、にんじんの秘密を解き明かし、影を打ち払わねばならぬ。
そのためには……“にんじんの洞窟”へ行かねばならん。」
「にんじんの洞窟……?」
「そうじゃ……明日の朝、出発だ。」
「えぇぇぇぇええええ!?!?」
ほのかは思わずお湯の中でバシャバシャと暴れ、
カピバラたちが一斉に「プリンセス、ファイトなのだ!」と応援の声をあげた。
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