モフモフ騎士団出撃!にんじんの誓い!
「いざ出撃だぁぁぁ!!!」
「にんじん!にんじん!にんじん!」
にんじん騎士団のカピバラたちが、一斉に葉っぱマントをたなびかせて駆け出した。
武器はもちろん、にんじん型の槍と剣。
勇ましい…いや、ちょっとふわふわしてるけど、勇ましい!!
ほのかはというと、王冠をかぶったまま、目を白黒させていた。
「えっ!?私も戦うの!? 武器も何も持ってないし、私、戦いとか無理だよぉ!!」
すると、後ろからぽてぽてとやってきた小さなカピバラが、ふわっとほのかの手ににんじんの杖を渡した。
「プリンセス、これを!」
「にんじんの…杖!?」
よく見ると、ただのにんじんみたいに見えるけど、先端がキラキラと光っている。
触れた瞬間、ほのかの胸の奥に、あたたかい何かが広がった。
「これって、何かすごい力が…?」
その時、空からグラウド将軍の大声が響いた。
「カピパランドの温泉は! ワニ帝国がいただく!!!」
ゴオオオオオ!!
飛行船から大量の水鉄砲弾が発射され、温泉の湯気が一気にかき消された。
カピバラたちは大慌て。
「うわあああああ!」
「湯気がなくなったら、お肌がカサカサにぃぃぃ!」
「助けてプリンセスぅぅぅ!」
「くっ…!」
ほのかはにんじん杖をギュッと握りしめた。
「やるしかない…!私が…この国を守るんだ!!」
「プリンセス! 合言葉を!」
にんじん騎士団が叫ぶ。
「合言葉!? 何それ!?」
「にんじん! にんじん! にんじん!」
「プリンセスも一緒に!」
「えええええ!? えっと…にんじん! にんじん! にんじん!」
その瞬間、ほのかの手にしたにんじん杖が、ふわっと光り輝き、
杖の先から金色の葉っぱと、ふわふわのモフモフオーラがあふれ出した!
「これって……すごい!」
「プリンセスのモフモフパワーが覚醒したのだ!!」
王様カピがどこからか声を張り上げた。
ほのかが杖を振ると、にんじん型の光の波が空に向かって放たれ、
グラウド将軍の飛行船に直撃!
「ぐわああああああ!!? なんだこの癒しパワーはぁぁぁ!!?」
飛行船がガタガタと揺れ、ワニたちが次々にモフモフパワーに包まれていく。
「……あれ? なんかすっごく……あったかい……」
「癒される……カサカサの鱗がしっとりしてきた……」
ワニたちが次々と、ぽやぽやとした笑顔になり、
戦意を喪失して、湯けむりに包まれて眠り始めた。
「わ、私、勝っちゃった……?」
杖を持つ手がプルプル震えるほのか。
「プリンセスばんざーい!!!」
「にんじんばんざーい!!!」
カピバラたちが一斉にほのかの周りで踊りだし、
ポンポンとにんじん花火が打ち上がる。
その中心で、ほのかは王冠を撫でながら、ぽつりとつぶやいた。
「これが……カピパランドの力……。私、プリンセスとして……がんばらなくちゃ!」
こうして、ほのかは少しだけ勇気を手に入れたのだった。
でも、これはまだ序章にすぎない。
伝説の巨大にんじんの謎、
ワニ帝国の真の目的、
そして、カピパランドを包む癒しの力の秘密が、
少しずつ明らかになっていく──。