にんじん騎士団、見参!
「プリンセスほのか、我らがご挨拶を!」
カピバラたちに囲まれて、どうしたらいいか分からずにいたほのかの前に、ひときわ元気な声が響いた。
ほのかが顔を上げると、そこには小さな集団のカピバラたちが――
いや、よく見ると、背中に小さなにんじん型の剣や槍を背負い、葉っぱのマントを羽織った、ちょっと勇ましい格好をしたカピバラたちがいた!
「にんじん騎士団、ここに参上!」
リーダー格の、ちょっと茶色が濃いカピバラが前に出て、胸を張る。
「我らはカピパランドを守る、にんじん騎士団!プリンセスをお守りし、いざとなれば、にんじんの刃を振るいます!」
「にんじんの刃って何!? カピバラなのに戦うの!?」
ほのかはびっくりして、思わず声を上げた。
「戦いますとも!」
リーダーが誇らしげに言うと、騎士団の面々が声をそろえて叫ぶ。
「にんじん! にんじん! にんじん!」
「わぁ……すごいけど、かわいい……!」
ほのかは思わず笑みをこぼした。
そのとき、のんびり湯気を立てていた王様カピが、ふわっとあくびをしながら口を開いた。
「ふぅ……プリンセスよ。そなたには、カピパランドの平和を守る使命があるのだ。」
「し、使命……?」
「そうじゃ。最近、ワニ帝国が温泉を狙って、ちょっかいを出してきておる。カピパランドの温泉は癒しの力を持つ特別なもの……奴らに渡せば、この国は干上がってしまうだろう。」
「えっ!? 温泉がなくなっちゃうの!?」
ほのかの目が真剣に変わる。
「だが心配無用。プリンセスには、この国を守る力がある……それが、伝説の巨大にんじんの力だ。」
「巨大にんじん……?」
ほのかは思わず、騎士団のにんじん槍を見た。
すると、リーダーの騎士カピが、誇らしげに槍を掲げた。
「伝説の巨大にんじんは、カピパランドの心臓とも言える存在。その力を借りれば、どんな敵も癒しの力で包み込めるのだ!」
「……でも、どこにあるの?その巨大にんじん。」
「それは……秘密なのだ。」
王様カピが、もふっとした顔で、また眠そうにあくびをした。
「ふわぁぁ……眠いのだ……。明日までには思い出す……かも。」
「えぇぇぇええええ!!?」
ほのかは思わず転んでしまった。
その瞬間、空の彼方で、雷鳴のような声が響いた。
「カピパランドの温泉、いただきに来たぜぇぇぇ!!!」
ほのかとカピバラたちが空を見上げると、そこには巨大なワニ型の飛行船が浮かんでいた!
船の先頭には、派手なマントをなびかせた大きなワニが仁王立ちしている。
「我こそはワニ帝国の将軍、グラウド様だぁ! カピバラども、温泉をよこせぇぇ!」
「大変だぁ! ワニ帝国の襲撃だぁぁ!!!」
「プリンセス、逃げてぇぇ!!」
「にんじん騎士団、出撃だぁ!」
騒然とするカピパランド。
ほのかはカピ王の前で立ち尽くし、ふるえる声で叫んだ。
「私……何をしたらいいの!?」
そのとき、王冠がほんのり光を放ち、
ほのかの耳に小さな声が聞こえた。
「モフモフを信じなさい。癒しの力は、あなたの中にある。」
ほのかの胸の奥に、何か温かいものがふわりと灯る。
彼女のカピバラ生活、そして、モフモフの大冒険は、今始まったばかり──!