誇り
「どういうことだよ。」
自分の意見を否定されたフリューゼルが疑問を呈す。
「俺の魔術が信用ならねぇってのか?」
「いや、お前の魔術の出来は疑ってない。」
「じゃあなんだってんだ。」
フリューゼルが少し苛立ちを見せる。
「俺が白髪の男に魔術を打った時に途中で魔術が
崩れた。」
「崩れた?どういうことだよ。」
「あの現象を俺は二年前に見たことがある。」
「あれは魔術を打ち消すものだ。」
「魔術を打ち消す?!お前そんなもん一体どこで..」
「武装国家ギゼルア。」
フリューゼルが言いかけたところでフュエルデルが
口を挟む。
「そうです、俺はあれと同じものを武装国家ギゼルア
で見ました。」
フュエルデルの発言にシデアが補足をつける。
「あの魔術を無効化する技術は国際指名手配されてる ガベル・イグハレスのものです。」
シデアが奥歯をぎしりっと噛み締める。
(そうかコイツの生徒はそのガベル・イグハレスに...)
フリューゼルが暗い顔で見つめたシデアの右眼が
煌々と輝いていた。
「だからいつフリューゼルの魔術が効かなくなる
ともわからない。」
「そうなると一刻も早く救出部隊を結成して
追跡しないといけない。」
「そうだ。」
フリューゼルの返事にシデアが頷く。
「じゃあ俺とお前は確定としてあと一人二人って
とこか。」
「お前..いいのかよ?」
フリューゼルの発言にシデアが耳を疑う。
「いいもなにも俺なしにどうやって移動する標的を
追うんだよ。」
「それに魔導者の保護は俺の仕事だしな。」
「それもそうだな...ありがとう。」
「ケッ、生意気なガキが気遣ってんじゃねぇよ。」
「いつもみたいに生意気にかまえとけ。」
申し訳なさそうにしているシデアの背中を
フリューゼルがバシバシッと叩く。
「では残りの一人にはフルセリア・ビルデリア様を
雇いましょう。」
「フルセリア・ビルデリア!」
シデアとフリューゼルが驚きを隠せずにいる。
「勇者の名を冠するこの国最強の男、仲間としては
なにより心強い。」
「でもあの人はその強さから一部に武力が集中しない
ように少しの時間ですら莫大な金銭を要求すること
を国から義務付けられているはずだ。」
そうだ。俺はそれのせいで莫大な借金を負いかけて
この大学で働くことになったんだ。
「全額を我が大学で負担しましょう。」
シデアとフリューゼルの疑問にフュエルデルが
キッパリと答える。
「救出という業務内容な上に長時間の依頼。
おそらくこの大学の経営が揺らぐほどの
金が動きますよ。」
「構いません。ラグナ魔術大学の誇りにかけて必ず
我が大学の生徒を救出しなさい!」
フリューゼルとシデアが顔を見合わせる。
「「はい!!」」