はしめてのものたち3
「そういえば、なんて呼べばいい?...」
少し心が落ち着いたのか少女は遠慮気味に俺に呼び方を聞いてきた。
「父さんと、母さんはシディって呼んでるよ。」
「...お父さんとお母さん。」
「そういえば君はお父さんとお母さんになんて呼ばれてるの?」
「お父さんもお母さんもいない...天涯孤独。」
うぐっ、触れづらい話題だったか。それにしても天涯孤独なんてどこで覚えたんだ。
思いの外結構歳上なのかもしれないな。
「そ、そうなんだね...。」
いや、気まず!!!どうする。親の話題に触れたのは俺だし変に話題を変えるのも...
「ねぇ、シディ着いたよ...お酒屋さん。」
「...。」
「あれ、シディって呼んだらダメだった?...ごめんなさい。」
「いやいやいやいや、全然全然全然。」
「どんどん呼んで、どんどん。」
シディ呼びが可愛すぎて思わず固まっちまったぜ。
その後酒屋で酒を買い帰路についた。
彼女の進んで行く道は人気の少ないところで、建物もお世辞にも綺麗とはいえないものが多かった。
彼女はこんなところに住んでいるのだろうか。両親もなしに一体誰と。
「ここまでで、大丈夫だよ...シディ。」
「あ、そう?分かった。じゃあまたね。」
確かにここなら人にぶつかって落とすこともないだろうし、彼女の生活圏だ。
なんの心配もいらないだろう。のはずなのに、なぜか心のどこかで心配だと感じてしまうのはなぜだろう。