無気力
俺は目覚めた病院で様々なことを説明された。
俺が病院にいるのは山奥の魔獣討伐の依頼で研究所の
近くにいた冒険者が大きな物音がしたことで研究所の崩壊に気がつき俺を回収したからということ。
冒険者が入った時には既に研究所は核が破壊されていて壊滅状態であったこと。
また倒れている俺以外には誰もおらず、
牢屋にいた人たちもガベルもニッグも他の職員も
そしてシエラフィルも誰一人としていなかったそうだ。
あたかも最初から俺以外に誰もいなかったかのように。
研究所はこの国の人間のなかでは負傷兵のための義手や義足の開発をしている場所という認識で他国で騒がれている黒い噂については知らないようだった。
ただ今回のことで魔術師を使った非人道的実験をしていたことやエネルギー源である核に仮死状態の魔術師を使っていたことなどが判明し、ギゼルアの上層部はガベルを国際指名手配にかけたらしい。
全ての行動をガベル個人の意思ということにして。
看護師はなにも知らない俺に丁寧に説明をしてくれた。
だが俺にはもうすべてがどうでもよかった
この国のことも研究所のこともこれからのことも。
「もうどうでもいい...。」
俺がそういうと看護師は
「気になったらいつでも言ってね。」
と言って部屋から出て行った。
一ヶ月後俺は人体実験に巻き込まれた被害者として
ギゼルアが用意した船で帰されることになった。
俺は行き先を聞かれたときに故郷であるシビュラ王国ではなくヴィヘナ王国を選んだ。
特に深い意味があったわけではなかった。
ただ家には帰りたくなかったのだ。
俺は....なんで生きてるんだ...
四時間ほどでヴィヘナ王国についた。
魔術大学の職員寮には行かずに街をしばらく歩いて
見つけた宿屋に宿泊した。
宿代は元々持っていた俺の所持金でしばらくは
困らないであろう価格だった。
もう...何も考えたくない。
1ヶ月もすると宿から出入りしている俺を見つけたのか魔術大学から手紙が来ていた。だが中は見ていない。
手紙はほぼ毎日届いた。鬱陶しい。
さらに二週間がたった頃俺の部屋に人が来た。
「なぁ先生学校来ないのか?」
「俺先生に言いたいことがあって来たんだ。」
「ここに入れてくれないか?」
「俺開けてくれるまで動かねぇよ。」
ドアの奥で男がそう喋った。
誰だかはわからなかった。
だが部屋の前にずっと居座られても
気分が悪かったので俺はそいつを部屋に入れた。