ギゼルア潜入編 始 文明の差
「おら!ここに大人しく入っとけ。」
俺たちはあの男の指示通り捕まったフリをして、
研究所まだ辿り着いた。
今は研究所にいた牢屋番の男によって牢屋に
投げ入れられ大人しく拘束されている。
この牢屋にも魔術を封じる細工がしてあるらしく、
詠唱をしても意味はなかった。
牢屋には俺たちのほかに四歳くらいの子から
三十歳くらいの大人までが十五人ほどいた。
この人たち全員が研究の対象でおそらく
命を奪われる。そんなことは絶対にさせない。
「このあとどうするのよ。」
俺がそんなことを考えているとシエラフィルが
周囲に聞こえないくらいの声で話しかけてきた。
牢屋に来たらとりあえず待てと言われている。
「しばらくは指示通り待つしかないな。」
「アイツまた私たちを騙したんじゃないでしょうね。」
「それはないと思う。アイツの得も薄い。」
俺たちがそんなことを言いながら待ちあぐねていると
「やぁ!モルモット諸君。」
そんな声がどこからともなく聞こえてきた。
俺が辺りを見回すと壁にプロジェクターのように
二十代前半くらいの白い癖毛の白衣を着た男が
映しだされていた。
「君たちは突然攫われて右も左も分からない
だろうが〜」
男はここがどこでどういう経緯で連れてこられたか
そして自分がどういう立場なのかを話し始めた。
こいつが魔術師で研究をしてやがるのか。
それにしてもプロジェクターか、この国に来た時も
思ったがこの国は俺の知っている国のどちらと
比べても圧倒的に発展してる。
外には自動車や電車のようなものまで走っていた。
ここまで文明差があるとおそらく戦争になったら
魔術が使える程度じゃ勝ちようのない戦力差だ。
「で、君たちには今から実験台になってもらいます。」
映し出された男がそう言うと牢屋の中に
ガスが流れ込む。
「きゃぁ!!なに!」
「うっっ。」
噴霧口に近い人間から倒れていき少しずつ牢屋に
充満していく。
充満し切ると牢屋にいる全員が倒れる。
しばらくすると牢屋の扉が開きガスマスクをした男が二人入ってくる。
「あぁー今日もなかなか多いなぁ。」
「まあこの仕事なかなか給料いいから悪かねぇがな。」
そう言いながら倒れている人を回収しようとする。
「ん?こいつなにか持ってるぞ。」
「な!こいつ起きて...」
「「"雷岩"」」
男に雷を帯びた岩が飛んで行き男は意識を失う。
「おいどうした?」
もう一人の男がさっきの大声に反応する。
「ガスでよく見えないんだから気をつけろよ。」
「そうね、気をつけないとね。」
そう言って赤髪の少女が後ろからもう一人の
男の首を思い切り絞める。
「なっ、なんでお..まえ..起きて..」
「「"雷岩"」」
「ぐぅぁっ!」
もう一人の男も一人目と同じように魔術の岩で頭を
打たれ気を失う。
「ひとまず作戦第一段階クリアだな。」
魔術を射出した腕をおろしてシデアがそう言う。
「えぇ、悪くない動きだったわ。」
男の首を放したシエラフィルがそう返す。