射的屋の景品
「おいおい、これもゴミかよー。」
「使えそうなもの一つもないぞ。」
俺とフューは花火大会を終えて帰路についていた。
「そんなにハズレばっかりなの?」
「ハズレもハズレよ。これじゃあの本もハズレかな。」
俺は射的屋で手に入れた景品を見て肩を落としていた。
「これはなに?」
フューが景品を入れた箱の中から一つ取り出す。
手のひらサイズの鉄の羽の中心に綺麗な石が
埋まっている。
「なんだろう、髪飾りか何かかな?」
ほかの景品と比べてよくできた造形だ。職人の技巧的美しさを感じる。
裏返してみると翻訳機と書いてあった。
「翻訳機?」
「ほんやくきってなに?」
フューがずいっと顔を近づけて言う。
「翻訳機ってのは使うと言葉の違う人とでも会話が
できるようにしてくれるものだよ。」
へー。とフューは納得したように頷いた。
「これがそんな便利な道具ってこと?」
「どうやって使うんだろう。」
今まで喋ってこなかった反動なのか、花火大会以降
フューはやたらと口数が多い。
「まあ、とりあえず何も分からないし、
帰ってから色々試してみよう。」
その日俺もフューも家に帰ると張り詰めた糸が切れたかのようにすぐに寝てしまった。