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第十四話 いざ試練の洞窟へ

 次の日。

 俺はシャーロットとともに、試練の洞窟へと向かっていた。

 オリヴィアはセレナの家に待機している。


 セレナを連れていくにはもう一つ条件があると、父親役の男に言われたらしい。

 あと二人、彼の代わりとなる護衛の仲間を同行させる、というものだ。


 村を救ってくれた者たちとはいえ、突然現れた連中だけにセレナを預けるわけにもいかないだろうからな。

 まあ、当然と言えば当然の要求だ。


 護衛たちが村に到着するまで、おそらく二、三日はかかる。

 その間に俺は、勇者の試練にチャレンジしてみようというわけだ。


 試練の洞窟は、平原を抜けた先の岩山に存在した。


 洞窟の入口に、聖王都の兵士たちが見張りとして立っている。

 即席のテーブルにチェスのようなものを置いて、談笑しながら遊んでいる兵士たちもいた。


「試練に挑みたいだって? だけどもう、皇子たちが入ったあとだぞ」

「試練を受ける資格は持っています」


 そう言って、王直筆の招待状を広げて見せた。


「確かに本物だ。しかしなぁ。闇属性が勇者の剣? 光属性の皇子でも無理だったのに、おまえが引き抜けると本気で思っているのか?」

「そうだそうだ、闇属性の分際で! 無駄なことはやめて、さっさと立ち去れ!」


 相変わらずの冷遇だな。

 とにかく深呼吸して、心を落ち着かせなきゃ。

 想定どおり、想定どおり。


 それにしても、ユウダイは本当に剣が抜けなかったんだな。

 だから勇者の剣を持っていないことを指摘したとき、腹を立てて襲いかかってきたわけか。

 しかし光の皇子であり主人公の彼が、なぜ剣を抜けなかったのだろう。


「私もやめておけと言った。でも本人は、あきらめきれないらしいので」


 味方のはずのシャーロットが、突然そんなことをつぶやく。

 いやいや、あんたに言われてここに来たんだけど。


「どうせ無理なんだから、チャレンジさせてみてはどう? 私も無駄足で戻ってくるレイヴァンスを、笑ってやりたい」


 シャーロット、さすがにひどくない?


「そいつはいいや! 通してやるから、さっさと試して身の程を知ってこい」


 兵士たちがバカ笑いして、道を開けた。

 そういうことね。

 でも剣が抜けなかったら、本当に赤っ恥じゃないか。


 まあいいか。もともと蔑まれた身の上だし、これ以上落ちることもないだろう。


 洞窟に入れるのは、招待状を持っている俺だけだ。

 そんなわけで、シャーロットは入口で待つことになった。

 ではでは、いざ試練の洞窟へ。


 闇属性による地獄の炎を右手に召喚し、洞窟の中を照らす。

 光属性と違って、青白い炎だと洞窟の不気味さが増すな。

 でも、この洞窟は冒険における最初のダンジョンだ。道はそんなに入り組んでいない。そのうえ勇者の剣までの道を示した立札が、いたるところに存在した。

 洞窟内に生息しているモンスターもいるけど、まあレベル3で対処できる強さって感じだ。


 転生といえば、ステータスオープンなんて言葉で自分の強さやレベルを見ることができるのが定番なんだけど。

 そんな便利なものは、この世界にはないらしい。

 この洞窟のモンスターも村を襲ってきた魔族も問題なく倒せているけど、実際のところ俺って何レベルなんだろう。


 確か四天王になったあとの初バトルでは、主人公は25レベルくらいで撃退できたはず。

 そのあと何度も戦うことになって、最終決戦では50レベルくらいないと倒せないほどの強さになっていた。

 最終決戦のときのレイヴァンスが使ってくる魔法は、ひととおり習得している。

 するとレベル50くらいかな。

 そう考えると、もしかして俺って相当強いんじゃないか?


 だけど闇落ちしては意味がない。そうなれば、待っているのは破滅だけだ。


 色々考えながらモンスターに対処しつつ、洞窟の奥へと進んでいく。


 やがて、台座に刺さった神々しい剣が姿を現した。

 真上から入り込んだ日の光が、剣の輝きをさらに強めている。


「これが勇者の剣、ミスティローズブレイドか」


 もし抜くことができたら、どうなるんだろ。

 俺が勇者になるのかな。

 もしそうなったら、セレナたちと一緒に冒険することにもなるのだろうか。


 いかんいかん!

 そりゃ、このまま家に帰って引きこもるだけの人生なんていやだけどさ。

 変な期待をしちゃだめだ。


 目の前の剣は、闇属性なんかが持つにはあまりにも光に満ちている。


「とりあえず、試すだけ試すだけっと」


 どうせ無理だと思い、俺は片手で剣の柄を持って雑に引き上げてみた。

 すると何の抵抗も感じることなく、剣がするっと抜けてしまった。



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