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迷宮喫茶はじめました ~退職して店を建てたら隣にダンジョンが発生したけど気にせず営業する~  作者: 結城 からく


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第83話 ご新規さんと楽しくお話しよう!

 翌日も俺は普通に営業をする。

 閉鎖するか迷ったが、客がハンバーガーを食いたいと抗議してきたのが決め手となった。

 戦闘が起きるかもしれないと警告したところ、彼らは「いつものことだし自己責任だ」と笑っていた。

 相変わらずこの街の人間は狂っている。


 開店後、俺はひたすらハンバーガーを量産する。

 客の要望を受けて、使う具材に違いを作って飽きないように工夫した。

 人気なのはチーズバーガーだ。

 分厚いゴブリン肉のパティごと頬張るのが良いらしい。

 もうすぐ線上になるかもしれないというのに呑気なものである。


 無論、隣国との戦いに向けた備えも進めている。

 早朝のうちに闇市へ赴き、ありったけの武器弾薬を買い占めてきた。

 おかげで貯蓄がほぼ無くなったが、辺境伯から資産を分けてもらえることになった。

 諸々の賠償金と準備費用らしい。

 今後も必要となれば金を融通してくれるそうだ。

 さすがは大貴族である。

 利益度外視の出費で苦しくなるかと思いきや、結果的に懐が潤ってしまった。


 不自由なく店をやれることに安堵しつつ、俺は店内を観察する。

 国境付近は緊張状態で、双方の軍が睨み合っている。

 本格的な戦争は避けるつもりらしいが、非正規の部隊は止められないとノエルは言っていた。


 つまり密偵や暗殺者がギアレスに潜入する恐れがある。

 隣国の情報網がまともなら、この店に辺境伯がいるのは筒抜けだろう。

 おまけに本体は拘束されて、無力な分体しか行動できないことまで把握しているに違いない。


 連中がこの絶好の機会を放っておくはずがなかった。

 俺が同じ立場なら、真っ先に辺境伯を狙う。

 辺境伯さえ死ねば後の戦局を有利に運ぶことができる。


(そろそろ紛れていそうだよな)


 なんとなしに視線を巡らせていると、一人の客と目が合った。

 見慣れない風貌の男だった。

 目立たない外套を羽織り、安酒をちびちびと飲んでいる。

 ただの旅人に見えるが、端々の動きに警戒心が表れていた。

 無防備を装っているだけで、実際は冷たい殺気で張り詰めている。


 言うまでもなく怪しかった。

 俺は拳銃を握りながら呼びかける。


「おいお前」


 男から返ってきたのは弾丸だった。

 俺は鍋で防いでから即座に撃ち返す。


 弾は男の肩に被弾した。

 倒れた男は血を流しながらも立ち上がって叫ぶ。

 そして短剣を抜き放ち、俺に飛びかかろうとする。


 刹那、死角からメルが強襲を仕掛けた。

 ナイフで首を刎ねようとしているので、俺は指示を飛ばす。


「待て、殺すな」


 メルのナイフが軌道を変えて、男の両膝を切り裂いた。

 悲鳴を上げた男は転倒し、テーブルに置かれた野菜バーガーに顔から突っ込む。

 一口目を食べようとしていた客は悲しそうな表情をした。

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