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迷宮喫茶はじめました ~退職して店を建てたら隣にダンジョンが発生したけど気にせず営業する~  作者: 結城 からく


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第57話 ゴブリン・フルランチ

 注文が来た。

 俺は器にゴブリンのスープを注いでメルに渡す。

 作りかけのゴブリンの煮込みを仕上げて大皿に移した。

 ゴブリンの丸焼きはもう少し時間をかけた方がよさそうだ。

 香ばしい匂いを漂わせるゴブリンの揚げ物は、素早く取り出して並べておく。


 厨房はゴブリンで埋め尽くされていた。

 どれだけ消費しても減っている気がしない。

 この数日でゴブリンの下処理が格段に上手くなってしまった。

 今なら目隠しをした状態でも正確に捌けるだろう。


 無心でフライパンを動かしていると、追加の料理を取りに来た冒険者が苦言を洩らした。


「店長、ゴブリン料理が多くねえか?」


「仕方ないだろ。どいつもこいつもゴブリンの死骸を持ってくるんだ。自然とこうなる」


 これもすべてゴブリンの大量発生が原因である。

 迷宮に潜った冒険者達は、少しでも食費を浮かせるためにゴブリンを持ち込む。

 なぜか味が他の店より美味いらしく、こうして望まない繁盛を謳歌しているわけだ。

 ちなみによく持ち込まれるのは手足の肉である。

 淡白な味で癖が少なく、他の部位より食べやすいらしい。

 逆に内臓は食えたものではないため、リターナの調合術で薬や毒になっていた。


 ゴブリン料理は臭みを消しの薬草や香辛料をよく使う。

 それらの消費量が地味に面倒だ。

 明日には闇市で補充しなければならないだろう。

 魔物の死骸から香辛料を作る試みも行っているので、なるべく早めに完成させたい。


 余談だが、処理し切れないゴブリンは樹木の魔物に与えている。

 そのせいで干からびたゴブリンの死骸が、枝に絡まって店内各所からぶら下がっていた。

 完全に吸収されるまでは、この不気味な光景を我慢しなくてはならない。


 ちなみに植物の魔物の名前はサズに決まった。

 募集した案から適当に選んでみた。

 呼ぶと反応するので、しっかり自分の名前だと認識しているようだ。

 今後も従業員として働いてもらうつもりである。


 ゴブリンの干し肉を齧って酒を飲む冒険者が、悲しそうにぼやく。


「たまには別の料理が食べてえよ」


「文句があるなら他の食材を取ってこい。それか別の店に行け」


「店長は冷てえよな」


「言いたいことを我慢しないだけだ」


 そんなやり取りをしていると、新たな冒険者が店にやってきた。

 先頭の剣士は、首無しのゴブリンを掲げて叫ぶ。


「店長ー! 血抜きはしてるから料理してくれよ!」


「おう、分かった」


「またゴブリンかぁ……」


 嘆く冒険者は、哀愁のある表情で酒を呷った。

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