第54話 停戦の約束
騎士団長はホットミルクを飲みながら述べる。
「今回、第二騎士団は独断での暴走で甚大な被害を出した。人員不足もあるが、責任追及が強すぎて存続困難となり、ひとまず凍結されることになった。まあ実質的な解体だな。いずれ再編されるまでは名ばかりの組織になる」
「あの女騎士……ルシアはどうなる」
「第三騎士団が面倒を見ることになった。他の人員も、それと設備やら資金も第一と第三で吸収する予定だ。あんたのおかげで大儲けって感じだぜ」
やや都合の良い状況だが、嘘を言っている様子はなかった。
諸々の元凶である第二騎士団は潰されたようだ。
癒着した貴族でもさすがに擁護できなかったのだろう。
意図的に省いた情報や、隠している事実はあるだろうが大筋は真実と思われる。
少なくとも第二騎士団よりは信頼できる。
俺は前職は傭兵だ。
一応、法に則ると最下級の騎士とされる。
無所属の期間が長いものの、王国騎士団の構図は知っていた。
庶民派とされる第三騎士団の評判は概ね良い。
全体的に信頼が厚く、汚職や搾取の類を許さない傾向にあった。
故に身内の悪事を断罪し、高潔な印象を保とうとする。
そんな組織の長が目の前の男なのだ。
ここは信じてやるべきだろう。
もし敵対するようなら殺すだけである。
何も難しい話ではない。
騎士団長がふと視線を動かした。
彼の見つめる先は俺の背後――厨房裏の倉庫だ。
連射銃を筆頭に様々な武器を保管してある。
しっかり施錠しているので中身は分からないはずだが、何か察したのだろうか。
視線を外した騎士団長はミルクを飲む。
「騎士ルシアの報告書によれば、この店は迷宮の一部で非常に危険だとされていた。何か誤魔化してるとは思っていたが、ようするにあんたが強すぎたわけか」
「迷惑な連中を追い払っただけだ」
「謙遜すんなよ。ここで何があったかは目撃者から調査済みだ。戦争でも始めるのかって噂だぜ」
騎士団長は手を振って笑う。
何気なく言っているが、事前に聞き込みを行っていたらしい。
俺の人柄を含めて、対面してもいい相手なのか判断していたのだろう。
用意周到な男である。
苦々しい表情の騎士団長は頬を掻いて言う。
「王国騎士団としては、これ以上あんたと戦いたくない。賠償金はしっかり払うから、攻撃しないでもらえるか」
「俺は店を守ってるだけだ。そっちが引き下がるなら手出ししない」
「そうか、助かるぜ」
安堵した様子の騎士団長は握手を求めてくる。
それには応じず、俺は二杯目のホットミルクを差し出した。




