第38話 喫茶店の素敵なお仕事です
店内からあっという間に客がいなくなった。
その直後、矢の一斉射撃が再開する。
俺は両手に拳銃を握り、当たりそうなものを弾いていく。
メルはナイフで対応していた。
俺よりも身軽に動いており、彼女が負傷する兆しはない。
一方でリターナは何本も食らっているが、血を吐きながら呑気に笑っていた。
不死身を心配してやる必要もなさそうだ。
外から矢の雨が叩き込まれる中、樹木の魔物が急速に枝を伸ばす。
枝は壁や天井を覆うことで騎士団の攻撃を遮ってみせた。
魔力強化された矢が室内に入ってこなくなり、途端に安全地帯となる。
俺は樹木の魔物を褒める。
「良い判断だ」
仲間意識か、或いは縄張りを攻撃されたと思ったのか。
樹木の魔物はすっかり俺達と連携を取っている。
まあ、協力的なのはありがたい。
騎士団の死体処理を兼ねて、たっぷりと褒美をやるつもりだ。
ほどなくして矢の射撃が止まった。
効果が薄いと感じたのだろう。
それからすぐに店の数カ所に火が放たれた。
随分と徹底しているが、俺達が動揺することはない。
こういった展開を予測して、事前に準備を行っていたのだ。
たとえば店全体にリターナ製の薬液を塗ることで、耐火性能を向上させている。
案の定、火は燃え広がらず、僅かに焦げ臭い程度で済んでいた。
外にいる騎士の怒声が聞こえてくる。
作戦がなかなか上手くいかずに苛立っているようだ。
奴は遠距離攻撃で一方的に叩き潰すか、室内にいる俺達を焙り出したいのだろう。
だから直接踏み込まずに小細工を試みている。
(そろそろ痺れを切らす頃だな)
俺は厨房裏の倉庫を開ける。
埃臭いその空間には大量の武器が置かれていた。
ほとんどが銃と予備弾薬入りの木箱で、新品から中古まで様々だ。
これらの武器は二日前に闇市で買った品々だった。
騎士団の迎撃で使うために揃えたのである。
「さて、派手にぶっ殺すか」
俺は倉庫の中央に鎮座する兵器に手を置く。
土台の付いたそれは固定式の連射銃だ。
小型のゴーレムが内蔵されており、分類的には魔術武器となる。
側面の金具を回転させることで弾を撃ち続けることができるのだ。
拳銃の破壊力とは比較にならないだろう。
俺は連射銃を押して、店の入口を狙う位置まで移動させる。
弾もしっかり装填して予備もそばに置いた。
店は樹木の魔物が覆っているため、侵入するには入口を使うしかない。
誘導されてきた騎士どもを蜂の巣にするわけだ。
実に愉快な作戦だろう。




