第27話 過去を隠す奴はだいたい強い
剣士の消耗は露骨だった。
魔弾による負傷は甚大で、身体強化を解けば立てないような状態である。
無茶な戦い方のせいで魔力も枯渇寸前だろう。
さらに一方的に攻撃されているという事実は、心理的な負担にもなっているはずだ。
「畜生が、ふざけやがって……」
悪態を吐いた剣士はロングソードを捨てる。
血みどろの手で掴んだのは解体用のナイフだった。
大振りの攻撃が当たらず、ロングソードを扱う余力もないことから武器を切り替えたようだ。
もっとも、所詮は悪あがきに過ぎない。
大した脅威でないのは明らかだ。
強がってはいるものの、多量出血で顔色が悪い。
目の焦点も合っておらず、朦朧としているのは丸分かりだった。
剣士はふらつきながら突進してくる。
俺は刃を躱して銃で殴り付けた。
続けて蹴りを放ち、追撃の肘打ちを浴びせる。
その合間で弾の装填も行っておく。
剣士は全力の身体強化を維持できていなかった。
打撃が通用するみたいなので、俺は魔弾を使わずに発砲する。
弾は剣士の肉体を容赦なく貫いた。
「くそがっ、ぶ……ハッ、ハァッ……」
満身創痍の剣士がナイフを振るうも、空を切るばかりだ。
俺は無表情のまま拳銃の引き金を引く。
銃声と共に、ナイフを握っていた剣士の指が千切れ飛んだ。
剣士は絶叫して跪く。
俺はその頭部に弾丸を見舞った。
倒れたところに何発か撃ち込むと、剣士は完全に沈黙する。
そして二度と起き上がることはなかった。
俺は死体を引きずって樹木の魔物に投げ付けた。
樹木の魔物は、嬉しそうに枝を伸ばして死体を絡め取る。
最近は真面目に働いているようなので、これくらいの褒美は必要だろう。
どうせ捨てるしかないので有効活用すべきだ。
俺は死体から剥ぎ取った荷物を机に置き、見物していた客に呼びかける。
「騒がしくした詫びだ。好きに分け合え。喧嘩した奴は撃ち殺す」
客達は一斉に殺到し、さっそく荷物の中身を漁り始めた。
奪い合いが始まりそうな勢いだが、不自然なほどに行儀よくしている。
俺の脅しが本気であると知っているのだ。
何より目の前で剣士が殺されたのだから軽視できるはずもない。
俺は拳銃を仕舞って厨房へと戻る。
その際、リターナが声をかけてきた。
「さすがだね。剣士を相手に近接戦闘で圧勝とは」
「あいつが弱かっだけだ」
「そんかのことはない。彼は剣士として平均的な技能を有していた。真っ当な戦いならば、銃使いに負ける道理がない」
流暢に語るリターナは、どこから探るような目をしていた。
彼女は興味の色を光らせて言葉を続ける。
「二丁拳銃による近接戦闘術……ひょっとして君は」
「詮索すんな。俺はただの元傭兵だ」
「フッ、今はそういうことにしておこうか」
リターナは小さく笑う。
なんとなく腹が立ったので、彼女の眉間に銃弾をぶち込んでおいた。
今日の出来事を発端に、銃使いの冒険者から指導を希望する声が激増したのは言うまでもない。




