表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮喫茶はじめました ~退職して店を建てたら隣にダンジョンが発生したけど気にせず営業する~  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/104

第24話 銃は剣より強いとは限らない

 今日も今日とてメルの戦闘指導が行われていた。

 店内の少し開けた場所でナイフの扱いについて説明している。

 意外と理論的な内容が多く、冒険者達はすっかり生徒のような様子で教えを受けていた。

 そろそろ混み始める時間なので仕事に戻ってほしいものだ。


 指導風景を見守るリターナは感心したように頷く。


「メル君は良い腕を持っているね。容姿も端麗だし人気なのも納得だよ。人望があるのは羨ましいなぁ」


「お前も何か教えるか」


「自分はこれといった戦闘技能を持たない。組み技くらいはできるけど、それも不死身の特性を活かしたものさ」


「殴られたり刺されながらも、強引に掴みかかるわけだ」


「その通り。相手を心理的に怯ませることもできるから便利だよ」


 リターナはなぜか誇らしげに笑う。

 彼女の再生能力なら、そういった荒業も可能なのだろう。

 致命傷でも止められないという点は厄介かもしれない。


 話を聞いていた客の一人が俺に話しかけてきた。


「店長は戦闘指導を受けてないのか?」


「やらねえよ。面倒臭い」


「おいおい、即答だな。あんたの動きを学びたいって奴は多いんだぜ」


「へえ、物好きもいるもんだ」


 メルがいるのだから十分だろう。

 銃よりナイフの扱いを覚えるべきだ。

 使い勝手がまるで違う。

 そもそも俺は我流なので参考にされても困る。


 ところが、客の男は期待の眼差しを俺に向けている。

 酒の肴にしたいというわけだ。

 仕方がないので少しだけ乗ってやることにした。


「銃使いが生き残る秘訣を一つ教えてやろう」


「おお!」


「他の武器で強くなれ。以上」


 それだけ述べた後、俺は食材を切り分ける作業に移る。

 男は残念そうに抗議してきた。


「おいおい、そりゃねえだろ」


「銃は扱いが難しい。身体強化を習得して剣で斬りかかる方が手っ取り早い。悩んで相談するくらいならすぐに転向すべきだ」


 まず手入れが煩わしい。

 しかしそれを怠ると動作不良を起こす恐れがある。

 戦うたびに弾を消費するため、他の武器に比べて金もかかる。

 そもそも銃は高級品なのだ。

 まともな性能の物を調達するだけで苦労する。


 対人戦はともかく、魔物との戦いでも不利を強いられる場面は多い。

 弾の威力不足で外皮や甲殻を貫けないことがあるのだ。

 特に迷宮では適切な間合いを取るのも難しく、魔物と鉢合わせた時が辛い。

 銃使いの冒険者が嬲り殺しにされるのは珍しい話でもなかった。


 事情を聞いた男は顰め面で唸る。


「やっぱ銃使いって難しいんだな……」


「才能があれば大成できるが、世の中そこまで甘くない。結局は地道に鍛練を重ねて――」


「まったくよぉ! 偉そうにしやがる野郎もいたもんだぜ!」


 店内に下品な大声が響き渡る。

 それはどうやら俺に向けられた言葉らしい。

 端のテーブルに座る一人の冒険者が、挑発的な笑みを浮かべてこちらを睨んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ