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迷宮喫茶はじめました ~退職して店を建てたら隣にダンジョンが発生したけど気にせず営業する~  作者: 結城 からく


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第19話 常識人は損をする

 順調に増えていく売り上げの使い道を考えていると、また一人の客が入ってきた。

 そいつは二十代前半くらいの若い男で、臆病そうな表情で恐る恐る進む。

 とてもこの場には似つかわしくない奴だった。


 気になるのは、その男が冒険者ギルドの制服を着ている点だ。

 つまりギルド職員ということになる。

 とてもそんな風には見えないが、格好からして間違いない。


 冒険者達も囁き合って行動に注目している。

 一部の人間は笑っており、どうやら男を見知っているようだった。


(珍しいな。飲みに来たんだろうか)


 ギルドの人間がこの店に来るのは初めてだ。

 向こうからなんとなく距離を置かれていることには察している。

 この店の評判を聞いて、あまり関わるべきではないと判断しているに違いない。

 だから職員が来訪したのが意外なのだ。


 男は遠慮がちに俺の前までやってくる。

 注文を頼みたそうな雰囲気でもないので、仕方なく俺から話しかけた。


「何か用か」


「こ、こんにちは。僕は冒険者ギルドギアレス支部のマスターをやっているアレックスです……先日の大規模罠による事故の件で来ました」


 アレックスは頭を下げて名乗る。

 その身分を聞いて俺は驚いて訊き返した。


「お前がギルドマスターか」


「はい、一応……」


「似合わねえな。何かのコネか」


「祖父がギルドの幹部でして、修行として派遣された感じですね……」


 恐縮するアレックスは髪を掻いて苦笑する。

 あまり乗り気でないのが目に見えて分かった。

 そもそもこれだけ気弱な奴には向いていないだろう。

 ギルドが設営されてからまだ死んでいない幸運に感謝すべきではないか。

 こういう奴がギアレスで生きていけるはずがない。


 周囲の視線を気にしつつ、アレックスはまた頭を下げる。


「冒険者の治療を手伝ってくださりありがとうございます。おかげでたくさんの命が救われました」


「礼ならあの女に言ってくれ」


 俺は頭上を指差す。

 機嫌よく揺れるリターナは、首の絞まる苦痛を気にせず微笑んだ。


「力になれて光栄だよ。ギルドから嫌われていると思っていたのでね」


「は、はあ……」


 アレックスは戸惑い気味に応じる。

 完全に頬が引き攣っており、今すぐ立ち去りたいのが丸分かりだ。

 ここ最近は狂った人間ばかりを見てきた俺からすると、実に新鮮な態度であった。

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