相対
俺はアルト伯爵に剣を向け、ふうと息を吐く。
「あまり荒事は好きではないんだけどねぇ……しかし、僕の兵士が軒並み君たちに倒されているから、僕がやらないとなぁ……負けちゃうしねぇ……」
そう言って、アルト伯爵はぐっと自分の拳を握る。
「まあ……兵士が負けても直接君らを叩けば僕の勝ちだからね。ちょっと本気出そうかな」
アルト伯爵が手のひらをこちらに向けてきたかと思うと、いくつもの魔法陣が空中に生成される。
「《多重火球》」
その声と同時に魔法陣が赤く燃え上がり、いくつもの火球がこちらに向かって飛んできた。
俺は咄嗟に回避をしつつ、こちらに飛んできた火球は剣で切り落としていく。
しかしこんな強力な魔法を扱うことができるなんて、少し舐めていたかもしれない。
「それそれ! もっと避けろ! 俺はいくらでも魔法なら使えるぞ! いつか当たって君が死ぬまで、僕はずっと魔法を使い続けるよ!」
ははは……舐められたものだ。確かにこんなにも連続で魔法を放たれ続けたら、俺は避け続けるしかない。
相手の魔力が限界になるまで耐え続けるのもいいが、この様子だとかなりの時間を要することになるだろう。
「クソ……困ったな……!」
このままじゃ、俺の体力が限界になってしまうかもしれない。
ユウリさんは意識を失ってしまっているから助けを求めるのは不可能だ。
他の人に頼るにしても、全員が兵士と戦っているから援護をするにしても難しいだろう。




