試してみるか?
そう言って、ユウリさんはアルト伯爵の方に駆け抜けていく。
彼女なら心配しなくても、きっと大丈夫だ。
何事もなく、すぐにアルト伯爵を倒すことに成功するだろう。
俺は兵士たちを殲滅することに集中するため、視線をユウリさんから外す。
やっぱり敵兵士の数は多いが、これほど仲間がいるんだ。
別にたいしたことではない。実際に今はこちらの方が有利な状況である。
リリーたちもそうだが、仲間の兵士も確実に敵を減らしている。
これは……行けるか――。
「うぐっ……!?」
「おいおい……マジか!?」
突然ユウリさんの悲痛な声がしたかと思うと、彼女はアルト伯爵の前で倒れていた。
どうやら意識を失っているようだ。
「ははははは! 市民が貴族である僕に勝てるわけがないだろう! 馬鹿だなぁほんと!」
「おい待て!」
アルト伯爵が愉快そうにユウリさんを踏みつけているのを見て、咄嗟に俺は飛び出す。
このままでは、ユウリさんの命が危ない。
「ずっと気になっていたんだけど、君は誰だい? 少なくとも僕の領地の人間ではないだろう?」
「俺はただの暇人だよ」
「へぇ……君、相当な暇人なんだね」
「ただ、てめえをぶっ倒すことに関しては自分から進んでやろうとしているけどな」
「君が僕に勝てるの?」
「試してみるか?」




