戦闘開始
「ははははは! ほんと、君たちが馬鹿で助かるよぉ!」
「アルト伯爵……貴様……!」
ケラケラと笑いながら拍手をしている人間――アルト伯爵をユウリさんは睨めつける。
どうやらアルト伯爵直々こちらに顔を出してくれたようだ。
全く……舐められたものだ。
「ユウリ……だったかな? 君は随分と僕に敵意を向けているようで。はて、僕が君に何かしたかな?」
煽るような口調で、アルト伯爵は言う。
「貴様のせいで……領民たちは苦しみ、死すらも考えてしまう状況になっているんだ……! どの口が言っている!!」
「最低だよ……」
「酷いです……」
リリーとカレンが悲しそうな表情で呟く。
俺も俺で、話を聞いているだけで悲しくなった。
こんな人間が領主をしているだなんて、一体どうなっているんだ。
「まあいい。いくらでも僕に罵倒を浴びせるがいい。なんせ、君たちはここで死ぬんだから」
「そんなわけがないだろう! こちらも数多くの仲間がいるんだ! 貴様を倒すために、何度も屈辱を味わいながら今ここに立っているんだ!」
「そうだそうだ!」
「お前になんか負けねえよ!」
ユウリさんの声に触発され、後ろに控えていた仲間たちが声をあげる。
しかし、その光景を見てもアルト伯爵はくつくつと笑い続けている。
さながら、自分が負けるだなんて思ってもいないようだ。
「ならばやってみたまえ! 君たちのようなゴミ虫が貴族である僕に勝てるかどうか! お前ら、全員皆殺しにしろ!」
「戦闘開始だな……!」