待ち伏せ
ここから距離が遠いわけではない。
目に捉えることができる場所にアルト伯爵領の首都が見える。
しかし正面から入ることはしない。
当たり前ではあるのだが、首都にも市民が暮らしている。
ただでさえ騒ぎになるだろうに、正面から入ってしまったら更に加速してしまうだろう。
なのであまり人が暮らしていない東側から侵入することになった。
東側にはアルト伯爵邸があり、直接侵入することができる。
騒ぎが少なく、アルト伯爵だけを叩くとなるとこの作戦が一番だ。
「お前ら、準備はいいな」
アルト伯爵邸の壁までやってきた俺たちは、背中を預けて息を整える。
ユウリさんの声に、全員が静かに頷いた。
「恐らくアルト伯爵も直接叩きにくるとは思っていないだろう。侵入後は動揺を上手く使って速やかに制圧する」
そう言って、ユウリさんが壁を叩いた。
「それでは、侵入するぞ!」
ユウリさんの声と同時に、俺たちは一気に壁を乗り越えていく。
士気は十分だ。後はアルト伯爵を叩くだけで良い。
なんて考えていたのだが。
「おいおいおい……マジかよ」
壁を乗り越え、アルト伯爵邸へ侵入した結果見えた光景というのが数多くの兵士たちの姿だった。
どうやら……待ち伏せされていたらしい。




