敵兵
「待て」
ユウリさんの声が響く。
俺は剣に手を当てて、身構えた。
「これは……最悪だな」
「バレてるっぽいな。あれがアルト伯爵直属の兵士か」
第一拠点へと進軍する前の野営地として、比較的安全な場所を選んでいたはずなのだが。
どうして敵にバレてしまっているんだ。
「大方、味方になったと思っていた兵士の誰かが漏らしたといったところだろう」
「……そうだろうな」
俺は嘆息しながら、剣を引き抜く。
「しかし、向こうから来てくれるのは逆にありがたい。少しでも敵兵士は減らしておきたいところだ」
「そうだな。逆に後悔させてやろう。俺たちを舐めて攻めてきたことを」
振り返り、リリーとカレンに声をかける。
「二人は待機していてくれ」
「あたしはいつでもOK――ええ!?」
「私もで――ええ!?」
二人は驚いた様子で口を開く。
まあ、そりゃ納得は行かないだろう。
でも、ちゃんと理由がある。
「二人はどちらかと言えばバックアップ系の能力だ。可能なら、本番まで残しておきたい」
「それも……そうね」
「仕方ありません……」
そう言いながら、目の前にアルト伯爵兵を見据える。
「ユウリさん。何分くらいで決着がつくと思う?」
「私とケネスでだろう? そうだな……十分あれは確実に壊滅まで持って行けるだろう」
「へぇ……兵士は使わずに俺と二人だけでやろうとしているんだな。無茶をするぜ」
剣を敵兵へと向けて、俺はにやりと笑う。
「五分だ。五分で決着をつけよう」
「面白い! さすがは私が信じた男だ!」




