とはいえ
「とはいえ……お前は体力の方は大丈夫なのか?」
「体力? 急にどうした?」
俺が本部の廊下を歩いていると、隣かユウリさんが声をかけてきた。
表情からは少し心配の念が感じ取れる。
「もしかして心配してくれているのか?」
「そうだ。ケネスのことだ。確かなメンタルを持っているとは思うが……私がケネスの立場だと、少しモヤモヤする」
「別に俺は大丈夫だよ。あいつらに関してはあれだ。多少の責任があったから対応しただけ。何も考えていないよ」
「本当にそうなのか?」
「そうだよ。あんま気にすんなって」
「そうか。ならいいんだ」
「ま、ケネスなら大丈夫よ」
「ですです! だってケネスですもの!」
背後にいる二人が、声を揃えて言った。
ケネスだから大丈夫って……俺をなんだと思っているんだ。
まあ、実際俺は大丈夫だから間違ってはいないんだと思うけれど。
「で、捕らえた兵士の状態は?」
「未だに黙っているよ。だが、ケネスが来たら状況は変わると思う」
「というと?」
俺が尋ねると、ユウリさんはニヤリと笑う。
「なんせ、未知の力によって完封されたんだからな。そりゃケネスに対して怯えて当然だろう」
「あ、そうか。そりゃそうだな」
俺の能力。重力魔法。
あいつから貰った魔法は、あまりにも強力すぎて大抵の人間には圧倒的な力で封じることができる。
あんな能力を突然ぶつけられたら、そりゃ怯えるよな。
間違いなく、俺だって恐怖するだろう。
本部の奥まで、どんどん進んでいく。
奥に進むにつれ、本部内は静かになっていく。
多分、奥は誰も立ち入らないような場所なのだろう。
でもそれは当然。
危険な奴らを捕らえたのだから、間違って誰かが入るような場所に部屋があったら大問題である。
だんだんと薄暗くなってくる。
雰囲気はバッチリだな。
ユウリさんが一つの部屋の前で止まる。
「ここだ」
「へぇ。普通の扉だな」
「普通の部屋だからな」
目の前には、ありきたりな扉がある。
ユウリさんは一つ咳払いをして、コンコンと扉を叩いた。
すると、奥から声が聞こえてくる。
「ユウリだ」
「入って大丈夫です」
どうやら監視の声だったらしい。
許可が下りたのを確認した後、ユウリさんがこちらを見てくる。
「三人も問題ないよな。ともあれ、そこまで覚悟する必要はないのだが」
「俺は問題ない。リリーやカレンも同じだと思う」
「もちろんです!」
「大丈夫よ!」
「よろしい。それじゃあ、質疑応答の時間だ」
そう言って、ユウリさんは扉を開いた。




