残念な元仲間たち
「アナ。作戦は失敗だ」
「そうね……こうなっちゃうと仕方ないわよね」
「ああ。もう仕方がない」
「ええ。仕方ないわ」
二人はそう言いながら、嘆息する。
エドはナイフを取り出し、アナはこちらに手を向けた。
「無理やり連れ戻すしかないな」
刹那、エドが持っていたナイフを握りしめて接近してくる。
俺は咄嗟に剣を引き抜き、相手の攻撃を防いだ。
別にこれくらいの攻撃、どうってことはない。
だが、まさか本当に攻撃をしてくるとは思わなかった。
どうやら危険視していたのは間違いではなかったらしい。
「魔法弾!」
アナが放った魔法弾がこちらに飛んでくる。
たっく……ここは客間だってのに暴れるんじゃねえよ。
「よっと」
俺はエドが持っているナイフを弾き飛ばし、思い切り突き飛ばす。
大きく後ろにのけぞったエドを一瞥して、飛んできた魔法弾に向かって剣を突き立てる。
ここがダンジョンなら斬り伏せるだけでいいのだが……そういうわけにはいかない。
そこで魔法弾が剣に当たった瞬間、魔力吸収の魔法を発動した。
あまり得意なものではないが、これでも器用貧乏だと言われていただけある。
魔力吸収は無事に成功し、魔法弾は消滅した。
「大丈夫か!」
「助けに来たわよ!」
「来ました!」
騒ぎを聞きつけてか、三人が部屋の中に入ってきた。
「すまない三人とも! ちょっと騒ぎになっちまった!」
俺は謝罪をした後、すぐに前を向く。
ひとまず二人を大人しくさせるしかねえか。
「少し痛いかもしれないぞ」
俺は手を突き出し、重力魔法を発動する。
「なっ……!」
「なにこれ……」
緊急時以外は使いたくないと思っていたのだが、今が緊急なのは俺でも分かる。
相手は床に突っ伏し、動けない状態になっていた。
「さすがだな。よし。リリー、カレン。二人を確保するぞ」
「了解!」
「分かりました!」
言って、三人はエドたちの身柄を確保する。
動けないように腕を後ろに縛り、拘束されていた。
「クソ……! てめえ、調子に乗りやがって! ケネスのくせによ!」
「……もう最悪。本当に馬鹿!」
散々な言葉を投げかけられるが、俺には何もすることができない。
彼らはもう、正直俺の手には負えない。
「ケネス。こいつらの処遇はどうする」
ユウリさんが尋ねてきたので、俺は嘆息しながら答える。
「どっかにここまで来るのに使った馬車があると思うから、そこまで運んでやってくれ。すまん、迷惑かけて」
「構わないさ。まあ……お前も苦労人だな」
「まあな。それじゃあ頼んだ」
言って、ちらりと二人を見る。
「ケネス! てめえ、絶対ぶっ殺してやるからな! 覚悟しとけよ!」
「せっかく迎えに来てあげたのに! なんなのよもう!」
……残念だ。
一応は元仲間なのだが……まさかこんな奴らだったなんてな。
まあ、大体分かっていたことだが。
はぁ、とまた大きなため息が漏れた。




