どうしてこんなところにいるんだよ
俺の名前を呼んでいる……正直意味が分からない。
多少知名度は上がった自覚はあるが、別に必死に名前を呼ぶこともないだろう。
助けを求めるならば、特定の人物の名前なんて叫ばないはずだ。
それに、この領地の人間ではないと来た。
一体、誰なんだ。
「ともあれだ。リリー、カレン。今すぐに行くぞ」
「ええ!」
「分かりました!」
二人は急ぎで準備を終わらせたらしい。
急ぐ俺の背後を慌てて着いてきていた。
男に案内されるがまま、本部の外へと出る。
しばらく走っていると、ユウリさんの後ろ姿が見えてきた。
「君たち!」
こちらに気がついたらしい。
困り果てた様子で、駆け寄ってきた。
「アルト伯爵がまた攻めてきた。しかも、ケネスの名前を呼ぶ領地外の方を人質に取っていてな」
「一体誰……って、お前!?」
ユウリさんの背後にいる人質とやらを見てみると、思わず変な声が漏れた。
「エドにアナじゃねえか!?」
屈強な男たちに拘束され、俯いている二人の姿があった。
俺の声に気がついたのだろう。
ハッと顔を上げて、睨めつけてくる。
「来たわよ……!」
「やっと来やがったか……お前を追いかけていたら散々な目にばっか合うな。すまないが助けてくれないか」
「何喋ってんだよ! ここの領民のくせに生意気だなコラ!!」
アルト伯爵側の人間が、ケネスたちに向かって剣を突きつける。
「……ケネス。お前と話がしたいから早く助けてくれ」
「ねえ。彼らあなたの知り合い?」
「何故かケネスの名前を知っているようですが……」
隣にいたリリーたちが小首を傾げる。
しかしそれもそうだ。
彼女たちは二人のことを知らない。
いや、一度話したことはあったが名前までは教えていなかったはずだ。
「あいつらが俺を追放した奴らだ……まあいい。とりあえず今は助けよう」
ついでに、アルト伯爵が寄越した兵士たちも確保しないとな。
わざわざここまでやってきたんだ。
また何か用件があるのだろうし、向こうの事情を探るのも重要だ。
「んじゃ、お前ら。ひとまず地面の味でも楽しんでな」
兵士は五人。相手にするには問題はない。
それに、試したい能力もある。
手を前に出し、思い切り地面につける。
「なっ!?」
「あが!?」
「な、なんだ……!?」
兵士たちは一切行動することもできずに、地面へと体を叩きつける。
足掻こうとしているようだが、体が随分と重いらしく自由に動けないようだ。
「あちゃ……こりゃ強力すぎるな」
ケミストの野郎に発動した時には何も思わなかったが、人間相手に使うと強力さが顕著に分かる。
「な、なんだ今の能力は……いや、今はいい。地面に突っ伏している兵士たちを確保しろ!」
ユウリさんの声と同時に、奥に控えていた革命軍の兵士たちがアルト伯爵側の人間を拘束していく。
それに紛れて、俺は嘆息しながら前進していく。
「会いたかったぜ……ケネス」
「お前、どうしてこんなところにいんだよ」
目の前でヘラヘラと笑っているエドを見ながら、頭をかいた。
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