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【書籍化・コミカライズ】追放されたおっさん、暇つぶしに神々を超える〜神の加護を仲間の少女達に譲っていたら最強パーティが爆誕した件〜  作者: 夜分長文
五章 エドの失策と革命を起こそうとする暇人

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スラムの街

「見えてきた。あそこがアルト伯爵領の街だ」



 ここがアルト伯爵領のどの位置なのかってのは分からないが、少なくとも街には到着することができた。


 幸先は悪かったが、ひとまず安心していいだろう。


 にしてもだな。



「街なのか……あれ」



「ボロボロじゃない……」



「まるでスラムですね……」



 街とは言ったのもの、訂正しようか悩んだ。


 それほどまでに、外から見える建物がボロボロだったのだ。


 魔物だけじゃあ、こんな酷さにはならないだろう。


 明らかに、人為的な物も作用しているように見える。



「貴様! 今すぐにその家族を離せ!!」



「な、なんだ!?」



「なんだか物騒な声がしましたね!?」



 街の方から、荒らげた声が聞こえてきた。


 声の性質的に女性だと推測される。


 俺たちは慌てて街の中に入る。




「ふははは! 離すわけがないだろう! 革命軍は潰すようアルト伯爵に言われていてね、こっちも金を貰っているんだ。動くなよ、さもなければ子供の命も奪ってやるからな」




 広場には数多くのテントが設営されていて、人々はボロボロの衣服を着ていた。


 それだけでも街が危機に瀕しているのが察することができるのに、目の前にはもっとやばい状況が広がっていた。


 防具を身に着けた男たち三人が、母娘を拘束している。


 そして、母親らしき人物に剣を向けていた。


 おいおい……早速物騒だな。



「彼らは革命軍に所属していない、無関係な人間だ!」



 一人の女性が前に出ようとするが、近づこうとする度に男たちが母親に刃を突きつける。


 状況的には最悪で、動けば母娘共々死ぬ。


 動かなければ母親は死ぬ。


 全く初っ端から……。



「リリー、一発ぶっ放せ。目標は相手が持っている剣だ」



「了解」



 俺は指示を出し、すっと鞘に手を持っていく。


 少しの静寂と共に発射された弾丸は、男が持っていた剣に直撃。


 金属音と共に、剣は空中に舞った。




「な、なんだ――」




 一瞬、男たちが動揺してできた隙を俺は見逃さない。


 全力で地面を蹴り飛ばし、一気に距離を詰める。


 そして、鞘に収めたままの剣で男の顔面に向かってフルスイングを決めた。



「うがっ!?」



「な、なんだ!?」



「何事だ!?」



 吹き飛んでいく男を確認した後、俺はすかさず両隣にいた男たちに向かっても剣を薙ぎ払う。


 一人は頭に直撃させ気絶、一人は腹に打撃を与えて行動不能にした。



「逃げてください!」



「あ、ありがとうございます!!」



「ひ、ひっぐ……あり、ありがとうございます……」



 逃げていく母娘を確認した後、腹を抱えて苦しんでいる男に近づく。



「死んでないよな。よし、しばらくおねんねして反省してろ」



 嘆息しながら立ち上がり、目の前の女性を見る。


 それなりの防具を身に着けており、腰には剣が下げられていた。


 凛とした印象の人だ。



「あなたは……外の人間だな」



「はい、ケネスって言います。そして隣にいるのがリリーとカレン」



「はじめまして」



「はじめましてです」



 女性は腕を組んで、ふむと頷く。



「私はユウリだ。ここ、アルト伯爵領を変えるために革命軍を結成し、その代表をやっている」



「なるほどね。だからさっきみたいなことに」



 まさか既に革命軍がいるとは思わなかった。


 ともあれ、こんな酷い現状だと革命を考える人達が出てくるのは想定できる。



「ああ……奴らは革命軍とは関係のない市民も狙うのだ。本当に……悔しい」



「散々な状況って感じですね。神々の迷宮だけでなく、人間からも、か」



 俺も聞いていて腹が立ってくる。


 無関係な市民を狙うなんて人間がすることではない。



「しかし、あなたたちは何者なんだ。先程の力、ただの人間ってわけじゃないだろう?」



「まあ……一般人ってわけじゃないかもですね」



 説明しろと言われると少し難しい。


 ただの旅人って言ってもいいが、旅人がこんな場所に来るなんて思えないしな。



「とりあえず本部で話をしよう。案内する」



 そう言って、ユウリさんはくるりと踵を返す。


 俺たちも急ぎ足で彼女を追いかける。


 街を歩いていると、様々な人たちがテントから顔を出してこちらを見てきた。


 俺はそれを見て、なんとも言えない気持ちになった。


 子供たちは怯えており、外に出ようとしない。


 あの年頃だと外で遊びたいだろうに。


 周囲には革命軍らしき人たちがいて、街の警備をしているようだが……襲撃されている現状から考えるに人数は不足しているのだろう。



「……言葉が出ないわ」



「酷すぎます……」



 リリーたちがぼそりと呟くと、ユウリさんがこちらをちらりと見て悲しげな表情を浮かべる。



「酷いだろう。これも全て……アルト伯爵という人間――そして魔物たちのせいだ」



「さっきみたいな襲撃はよくあるんですか」



「ああ、定期的にある。それだけだとまだマシで、ここは神々の迷宮が近くてな。魔物にもよく襲撃されている」



 なるほどな。


 それじゃあ街がこうなってしまうのも納得できる。


 歩いていると、ギルドらしき建物の前までやってきた。


 ユウリさんが立ち止まり、ドアをノックする。


 こちらを一瞥して、


「ここが革命軍本部だ。入っていいぞ」

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