表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化・コミカライズ】追放されたおっさん、暇つぶしに神々を超える〜神の加護を仲間の少女達に譲っていたら最強パーティが爆誕した件〜  作者: 夜分長文
四章 破滅の道を進む者と暇人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/77

男爵とギルドからのお礼

「戻ってきてくれたか! きっと君たちならやってくれると信じていたぞ!」


 リレイ男爵の屋敷に戻ると、使用人よりも先にリレイ男爵本人が出てきた。


 どうやらずっと門の前で待っていたらしい。


 なんだか申し訳ないなと思いながらも、彼の気持ちをありがたく思う。



「ギルドからも伝達があった。ケネスたちが冒険者の面々を守ってくれたんだと」



 そして、少し髪をかきながら苦笑する。



「それと、冒険者が迷惑をかけたらしいね。謝っていたよ、ケネスたちには悪いことをしたって。こちらからも謝罪させてくれ。僕の領民が迷惑をかけた」



「いやいや! 謝らなくてもいいんですよ! 別に俺たちは気にしていないんで。な、二人とも」



「ええ! 全然気にしていないわよ!」



「私もです! どちらにせよ、みんなを守れて私は満足です!」



 二人がそう言うと、リレイ男爵は感激した様子で握手を求めてきた。


 リリーたちは苦笑しながらも握手をする。


 とはいえ、二人は嬉しそうにしていた。


 きっと、誰かを守ることができたからだろう。


 彼女たちにとって、人助けは生きることに等しいんだと思う。


 息をするのと同じで、誰かのために懸命に生きる。


 それが二人だと俺は認識している。


 全く、俺より立派な生き方をしているよ。



「それよりも、だ! 僕は君たちにお礼をしなければならない! ギルドからも少し話を聞いているかもしれないが」



 ああ……確か受付嬢さんが「いいことありますよ」なんて言ってたか。


 別に構わないんだけれど、お礼を受け取るべき瞬間ってものもある。


 ここはお言葉に甘えて受け取るべきだな。


 リレイ男爵が指を弾くと、奥の方から使用人が一人やってきた。


 手には袋が握られており、それをリレイ男爵に渡す。



「ギルドと僕からのほんの気持ちだ。旅の資金にしてくれ」



 言いながら、袋を渡してきた。


 ずっしりとした重みに、思わず声が出てしまう。


 待て待て、これってもしかしなくてもお金だよな。


 ちらりと中身を確認してみると、やはりお金が入っていた。



「こんなに……本当にいいんですか?」



「構わないさ。逆にこれだけしか出せなくて申し訳ない。本当はもっと出したいところなのだが、伯爵や公爵みたいにお金が有り余っているわけでもなくてね」



「いやいや、ありがたいです! すごく助かります!」



「ははは! 喜んでくれたようで何よりだよ!」



「ねね! 私たちにも見せてよ!」



「見たいです!」



「あまりはしゃぎすぎるなよ」



 リリーたちは袋を持つと、まず重さに感激していた。


 わいわい騒ぎながら中身を覗くと、今度はぴょんぴょん跳ねながら喜びだした。


 さながら小動物のようで、思わず笑ってしまう。


 リレイ男爵も同じだったらしく、肩を揺らしていた。



「二人とも笑ってる!?」



「……笑ってますよね!?」



 顔を真っ赤にした二人がこちらに寄ってきた。


 俺たちは仰け反りながら苦笑する。



「いや、そんなことないぞ……」



「ふふふ。僕は君たちが嬉しそうで何よりだよ」



「もう!」



「悲しいです!」



 まあ、少し可哀想なことをしたな。


 あれだよあれ。可愛い年下はからかいたくなるやつ。



「でも……ありがとう。本当に嬉しいわ。あたしたち、誰かの役に立てたんだなって実感できた」



「そうですね。私たちにお金を渡してもいいって思ってくれた事実が嬉しいです」



 二人は恥ずかしそうに笑う。



「当たり前じゃないか! 僕は君たちを英雄だと思っているからね。英雄さんたちにはそれ相応のお礼をしないと貴族として恥だ」



 リレイ男爵は胸を張って言う。


 そして、俺の方を向いて腰に手を当てた。



「で、これから君はどこへ行くんだい。ずっとここに留まるわけではないだろう?」



「まだどこへ行くかは未定ですけど、また神々の迷宮に挑もうと思っています」



 ここに留まるのも悪くはないのだが、やるべきことがある。


 神々の迷宮を攻略し、人々を助け、そして二人に加護を与える。


 暇を持て余した俺がするべきことだ。



「そうか……寂しくなるなぁ」



 リレイ男爵は苦笑しながらも、俺の肩を叩いてくる。



「きっと君たちは、人々が達成できたなかったことを成し遂げることができる。これからの活動、応援しているよ」



「ありがとうございます」



「ありがとう!」



「嬉しいです!」



 誰かの応援されると、胸が温かくなる。


 前までいた『龍の刻印』では、こんな経験はなかった。


 できて当たり前。


 それが当然の世界だったからだ。



「あ、そうだ。まだ君たち次の場所決まってないんだよね」



「そうですね」



 リレイ男爵は指をぴんと立てる。



「僕に提案があるんだ」



 言って、くすりと笑う。



「アルト伯爵領。あそこ、実はかなりやばい状態だって聞いていてね。伯爵も性格があれでさ、領民たちも苦しんでいるんだ」



 アルト伯爵領か。


 確か、ここから少し離れた場所にある領地だな。



「あそここそ、英雄が行って変えるべきだね。きっと国王様も喜ぶはずだよ」



 なるほどな。


 大方理解できた。


 俺たちの次の目標はアルト伯爵領、そこに決まりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ