無様(エド視点)
「クソ……クソ!!」
「エド、どうしよう……これ最悪じゃないの?」
「大丈夫だ……まだどうにかなる……!」
エドたちは商業ギルドマスターに怒鳴られた後、すぐに酒場にやってきていた。
机の上には多くの酒と食事が並べられており、決して二人が食べられる量ではなかった。
「それにこんなにお金を使って大丈夫なの? これからどうなるか分からないのに――」
「お前、まさかこれから僕たちがどうにかなるとでも思っているのか!?」
アナの言葉に腹が立ったエドが、ジョッキを握りながら叫ぶ。
顔は真っ赤に染まっていて、アルコールが回ってしまっている。
思考はふらふらとしていておぼつかない。
「別にそういうわけじゃないわよ! でも……万が一があるかもしれないじゃない!」
「馬鹿を言うな! 僕たちがケネスを追放しただけで落ちぶれるはずがない!」
肉を喰らいながら、エドはアナに叱責する。
だが現実は非情だ。
エドたちは間違いなく破滅の一途を辿っており、もう引き返せないギリギリの場所まで来ていた。
苦しいのに食べ物を口の中に放り込む。
ストレスの発散方法がこれしかなかったからだ。
どうしようもない、当たりようがないストレスをぶつけ続ける。
「飲み過ぎよ……」
「うるさい!」
アナが止めようとするが、エドは全く聞く耳を持たない。
もうエドは正常な判断ができないでいた。
「おいおい、あそこにたかがBランクの魔物討伐に失敗したSランクの野郎がいるぜ」
「ああギルドでは話題になってたよな」
「あの大手商業ギルマスがブチギレてるらしいぞ。あいつらやばいんじゃね?」
「絶対やばいよな。下手すれば降格もありえるって噂だぜ」
自分たちパーティが依頼を失敗した噂はもう広がっているらしい。
噂というものはすごい速さで広まるものだ。
『龍の刻印』の評判は現在、最悪といえる。
「お前らうるせえ! 俺たちに喧嘩売ってるのか!?」
エドはしびれを切らしたのか、ぼそぼそと呟いている冒険者に叫ぶ。
「おいおい、落ちぶれたSランクが何か言ってるぜ! 俺たちでよければ相手するぞオラ!」
「やってやろうじゃねえか! 来いよ!」
「ちょっとエド!!」
アナが止めようとするが、エドは止まろうとしない。
挑発に乗り、ズカズカと歩いて行く。
「僕を舐めるなよ……お前らなんかすぐに――」
「オラよッッ!」
相手冒険者の拳が腹に直撃する。
エドは避けることもできずに、その場に膝をついた。
「ガハッ……!」
酒が回っているのもあるが、エドは接近戦が決して得意ではない。
正面からの殴り合いになれば、そこらの冒険者に負けるのは当然といえる。
「やっぱりこいつ雑魚だぜ! 無様にもほどがあるだろ!」
「蹴り入れるか! オラ!」
「うぐっ……!」
エドは苦痛を訴えながらも、相手を睨みつける。
「お前ら……僕に喧嘩を売っておいてタダで済むと思うなよ!」
「はぁ? 今のお前に何ができるっつうんだよ! ケネスがいなくなったお前らなんか怖くねえ!」
「ケネスの名を言うな! あまり馬鹿にするなよ僕たちを!」
「ガハハハ! こいつは面白い! 哀れだから今回はこれくらいで勘弁してやろうぜ! じゃあな!」
「クソ……クソ……!」
エドは何度も拳を床にぶつけながら唇を噛み締める。
しかし、誰も彼に手を伸ばそうとするものはいなかった。
今までが酷すぎたのだ。
今の彼らには、もう味方はいない。
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