当然の結果(エド視点)
「直接謝罪って……そんな、僕たちSランクパーティですよ!?」
「ええそうですね」
「そんなことしたら大恥じゃないか!!」
「言ったはずですが。私たちは責任を持ちませんと。自分が行ったことは自分たちで責任を持つようにと」
「それは……!」
エドは唇を噛み締めながら、受付嬢を見る。
睨みつけるが、受付嬢は一切動じない。
「諦めてください。あ、そうです」
「なんだよ……まだあんのかよ!」
エドが叫ぶ。
しかし受付嬢は淡々と答えるのみ。
「もし相手方からギルドの方に何かクレームが入れば、それ相応の処分をさせていただきますので。Sランクパーティとはいえ、貢献できない、ギルドの評判を落とすようなことがあれば当然のことです」
クレームを回避するなんて不可能でしょうけど、と付け足す。
その通りで、エドたちが待っているのは絶望のみである。
わざわざ期待して、ここまでやってきているのだ。
もし依頼が失敗した――負けて帰ってきたなんてことを知ったら激怒しないわけがない。
「どうするのよ……エド?」
「……どうしようもないだろ」
アナの言葉に、エドは大丈夫だなんて言えなかった。
どうしてこうなってしまったのだ。
何が間違っていた。
こんな一瞬で、事態が悪化するものなのか?
自分たちはいつも通り戦闘をしていたはずなのに。
「…………っ」
ふと、ケネスが思い浮かぶ。
普段の戦闘はいつもケネスが率先して行っていた。
あいつは地味な動きしかしないが、確実に敵を仕留めていた記憶がある。
もしかして、今回の依頼を失敗してしまったのはケネスを追放してしまったからか?
戦力が落ちたからなのか……?
いや、ありえない。
あいつ一人追放したくらいで、戦力が落ちるわけがない。
なんせ、自分たちはSランクパーティなんだぞ?
「それでは、依頼主さんがお待ちですので」
逃げることなんてできない。
今更どうしようもない。
エドたちは受付嬢に案内されるがまま客間へと向かう。
扉を開くと、そこには商業ギルドのマスターがいた。
にこやかな笑みを浮かべながら、こちらを見ている。
「おお! 今回は依頼を引き受けてくれてありがとう! せっかくだから直接報酬金を渡したいと思いやってきたのだ!」
そう言いながら立ち上がり、頭を下げてくる。
しかしすぐに首を傾げて、
「おや。『龍の刻印』の代表者がいないではないか」
商業ギルドマスターは不思議そうに言う。
「このパーティの代表者は、僕です」
「んん? 確かケネスという男がいたはずだが、そうか。彼は代表ではなかったのか。ところで、彼はどうしたんだ? 私は一度彼に会ってみたいと思っていたのだが」
「今は……いません」
「そうか……残念だな」
心底残念そうにしながら、商業ギルドマスターは椅子に座る。
そして、
「ところで依頼の方はどうだった? なんだか暗い表情をしているようだが」
瞬間、エドたちの額には汗が滲む。
もしここで失敗しましたと言えばどうなってしまうだろうか。
激怒は避けられない。
下手すればギルドに何か言われるかもしれない。
責任という言葉を何度も投げかけられているのだ。
それこそ、大問題にならないだろうか。
今にも逃げ出したくなり、一歩後ろに下がってしまう。
「どうされました?」
「ああ……いや」
背後に受付嬢が立っていた。
まるで、逃げ出そうとするのはさせないかのように。
逃げ場なんてどこにもない。
そうすぐに理解した。
「依頼は失敗しました。魔物は……そのままです」
エドは勢いよく頭を下げる。
目を思い切り瞑り、下唇を噛み締めた。
「ですが……これは事故で……!」
アナがエドの代わりに説明しようとした刹那、
「ふざけるな!!!!」
商業ギルドマスターは叫ぶ。
机を叩き、エドの前まで行く。
「貴様、Sランクパーティだからって調子乗ってんじゃねえぞ! こっちがペコペコするだろうからって適当に依頼をやったんじゃないのか!?」
「そ、それは……」
「こっちはギルドに依頼するために別途で金も出しているんだ! CやBランクパーティではなく、Sランクパーティに依頼する分さらに依頼料がかかってくる。だが、有名な剣士がいると聞いて依頼した! 彼らなら即解決してくれるだろうと!」
言葉の勢いは止まらない。
最後にはエドの胸ぐらを掴み、睨めつける。
「果てにはその剣士すらもいない! あまりにも舐めきっている! 受付嬢さん、どうなっているんだ!」
「剣士――ケネスさんに関しては彼らが先日、追放処分を下しました」
「なんだと……? 一番の戦力を追放する馬鹿が存在するのか?」
「あいつは器用貧乏なだけで、僕たちの一番の戦力では――」
「世間ではそのような認識だ! 全く、自分たちのパーティで誰が一番なのかも把握していないとはな! 呆れたわ!」
言いながら、商業ギルドマスターは出口へと怒り心頭で歩く。
「もう二度とお前らには依頼しない! このギルドにもだ!」
「あ、あの……!」
エドが止めようとするが、ギルドマスターは去っていってしまった。
客間に残ったのはエドとアナ、そして受付嬢さんのみである。
「もう二度と、このギルドには依頼しないと言われましたね」
「……ああ、それがどうした」
「大手商業ギルド、あの方は当ギルドで貴重な依頼主でした。それを失った責任、きちんと取ってもらいますからね」
「ま、待ってくれ!」
「待ってよ!」
受付嬢も去ろうとするのを引き止めようとする。
が、受付嬢は無視を決め込んだ。
だが、ふと立ち止まって、
「あ、思い出しました。何の連絡もなく依頼を無視した方からのクレームも入っています。今後、こちらに来ると言う方もいらっしゃいましたので、対応の方お願いしますね」
「あ、ああ……」
言いながら、受付嬢は部屋から去っていった。
残された二人はただ、呆然とするのみである。
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