だからお前ら抱きつくな!
【◆三章完結!◆】
『とはいえ……貴様は加護を欲しがらないのだろう? ケネスよ』
クリアリーは不機嫌そうに俺のことを睨めつける。
なんだか不満そうな表情を浮かべていた。
不満になる意味が分からないんだけども。
「なんだ、エルドラから話聞いていたのか」
『エルドラから聞くわけがないだろう。あいつと話すのは純粋に不快だ』
「ええ? それじゃあ誰から聞いたんだよ」
尋ねると、クリアリーはわざとらしく視線を逸らす。
なんだ……? 隠し事でもあるのか?
隠し事にしても、別に誰かから話を聞いたなんて隠すことでもないだろうに。
『……私より何百倍も偉い人だ。いるんだよ、神様にも代表ってやつが』
「偉い人、ね。初耳案件だな。詳しく聞かせてもらえたりするか。生憎と俺は暇でそういう類の話を聞くのは好きなんだ」
『現段階では不可能だ。諦めてくれ』
意味ありげにクリアリーは言う。
「現段階ってことは、いつか知る機会でもあるってことか?」
『いつかな。どうやら貴様らは選ばれた人間らしい』
選ばれた人間だって?
「どゆこと?」
「なんですかそれ」
「同じくだ。なんだよそれ」
尋ねるが、決してクリアリーは返事をしない。
『今は気にするな人間よ。私は私で不満なんだ。特に貴様のような人間が選ばれたということを』
俺はあからさまに睨みながら言ってくる。
なんだよ。もしかして俺って神様の界隈では嫌われ者なのか?
確かに嫌われやすい性格していると思うけど、まさか神様たちにまでとは。
これもある意味神業なんじゃないか?
ここまで来たら誇っていいよなこれ。
『ニヤついているこの男は放っておいて、私の担当はカレン。貴様だ』
「は、はい!」
「おめでとうカレン!」
俺が一人ニヤついているのがバレていたらしい。
クリアリーがカレンの下まで歩いていき、指を弾くと球体が現れる。
どうやら加護の形ってのは神様共通らしい。
『貴様は何が欲しい。何を望む』
「の、望む……ですか?」
望むって……これまた何でもあげるような言い方をするじゃないか。
リリーの時はエルドラが選んで与えていたが……一体どういうつもりなのだろうか。
俺がじっと見ていると、クリアリーがこちらを見てくる。
『はぁ……。あれだよ。私はエルドラに負けるのが嫌いだからね、こういうところで見栄を張っておかないとエルドラより弱いなんて扱いされたら不満なんだ』
「お前……可愛いところあるな」
『ぶち殺すぞ人間』
「そう簡単には殺されねえぞ神ころ。暇人舐めんなよ? 知ってるか? 過去に何もやってない暇人から賢者になったやつもいるんだぞおら」
『……そうだな。悪かった』
「お、おう」
やけに素直だったせいで動揺してしまった。
なんなんだこのクリアリーとやらは。
偉そうにしているが実は内心ドキドキだったりするんじゃね?
『やはり殺すぞ人間』
「心を読んでくるのはなしだと思うわ」
こほんと咳払いをして、クリアリーは再度カレンを見る。
『言ってみろ、人間』
「わ、私は……!」
カレンが前に出て、ぎゅっと拳を握る。
じっとクリアリーの瞳を見据え、
「誰かの役に立てる力が欲しいです……!
『貴様、己の強さを求めないのか?』
クリアリーが不思議そうに尋ねると、カレンが決心した様子を見せる。
それを見てか、彼はうむと頷いた。
『いいだろう。誰かの役に立つことも、それまた力だ。誰かを助けるためには力がいる。そのための力を与えよう』
クリアリーが球体を指で弾くと、カレンの胸にすっと入っていった。
きらりと胸が光り、輝きは収まっていく。
『私が持つ補助魔法の知識を全て与えた。貴様なら誰かのために、なんだってできるだろう』
「すごいじゃん! 神様の知識を全てってすごすぎるよ!」
「よかったじゃねえか! 俺は嬉しいぞ!」
カレンの肩をバンバンと叩くと、赤く頬を染めて照れくさそうにする。
彼女はずっと真面目そうな表情をしているが、こういう可愛い一面もあるらしい。
オッサン見ていて微笑ましいよ。
「で、お前は天界に帰るんだろ?」
『そうだ。私がする人間界での役目は終わったからな』
「役目ねえ。とりあえずお前は天界でエルドラと一緒に人間たちに土下座しろ。神々の迷宮で困っている人間たちがいっぱいいるんだ」
『エルドラと頭を下げるなど絶対に断る。ただ……謝罪する。申し訳ないことをした』
「謝れば済むって問題じゃないんだけどな。まあお前にできることはそれくらいだし、しゃーないが。たっく、神様たちの趣味が未だに分からんわ」
わけわからんと手を振ってみせると、彼は相変わらず不機嫌そうにする。
しかし、そろそろ時間らしい。
彼の体はもう消えそうになっていた。
『……ちっ。この男に負けたと思うと虫唾が走る』
「俺たち、な。天界で反省会でもしてな」
『…………』
最後まで不満げな表情を浮かべて、クリアリーの姿が消えた。
瞬間、視界に閃光が走って最後には時計台の前にいた。
試しに扉を開けてみると、中はただの空洞になっていた。
見上げると、時計の針も止まっている。
完全に神々の迷宮は消滅したってわけか。
「お疲れ様。これで攻略は終わりだ」
「やったねケネス! やっぱケネスは最高だよ!」
「これでまた強くなりました! また、誰かを救えました!」
言いながら、二人が両肩に抱きついてくる。
「おい! だから抱きつくな!」
こいつらは本当……歳の差ってものを考えていないな。
はあ、と俺は空に向かってため息を吐いた。
これにて【第三章完結】になります!ここまで連載することができたのも、間違いなく読者様の応援があったからこそです!改めまして感謝を!
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