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【書籍化・コミカライズ】追放されたおっさん、暇つぶしに神々を超える〜神の加護を仲間の少女達に譲っていたら最強パーティが爆誕した件〜  作者: 夜分長文
三章 神々の迷宮『クリアリー』

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戦争のお時間だ

「あれは……もしかして」



「もしかしてだろうな。神様のことだ、丁重にお出迎えするつもりらしい」



 扉の隙間からは光が漏れている。


 あそこだけが異様な雰囲気を放っており、踏み込むのすら人間なら躊躇してしまうだろう。



「きっと楽しんでるのさ。なんせ剣士の俺が拳で殴りつけるって言う面白い動きをしたからな」



「恐ろしい案件ですよほんと。剣士が剣を捨てて拳で行くなんて」



「器用貧乏だからな。ある程度行ける行ける」



「器用貧乏の概念が壊れるわよ……世の中の器用貧乏が普通に見えてくるわ」



「そうか? 俺は普通に器用貧乏だと思うけど」



「思わない」



「思いません」



「あ、ああそう……」



 過剰な反応だと思うんだけどな。


 あ、やっぱり遠回しに俺に対して悪口を言っているのか?


 全く最近の若者は怖いな。


 俺も若いけど!



「で、行くんだろ。心の準備はできたか?」



 俺が尋ねると、二人はこくりと頷く。



「もちろんよ!」



「当たり前です!」



「良い返事だ」



 笑みを浮かべ、くるりと扉の方に向く。



「んじゃ、行くか」



 扉の方に歩き、ドアノブを握る。


 すっげえ圧力だ。


 持つだけで胃が痛くなるレベル。


 暇人にとってはこれほど充実した瞬間はないだろう。


 この扉をくぐったらどうなるんだ。


 どれほど俺の暇度が充実する。


 待ってろよ神!


 俺はドアノブをひねり、扉を開く。



『迷宮はどうだった。楽しかったか、勇気ある人間たちよ』



 そこには、人間の姿をした神様がいた。


 性別はどちらかと言えば男に見える。


 瞳の中には時計が映っていて、髪には歯車の装飾が施されている。


 さすがは神様と言うだけあって、身なりは美しい。



「楽しかったよ。本当、殺す気満々って感じなのがめちゃくちゃ感じたわ」



 そう言うと、神は笑う。



『そりゃ殺すつもりで行くだろう。なんせエルドラを倒したと言うのだからな』



「へえ。知ってるんだそういうの」



『もちろん分かる。だが人間、私はエルドラと違ってそう甘くはないぞ』



 神はニヤリと笑い、手を前に突き出す。


 すると、神々しい光と共に巨大な時計の針が現れた。


 ぎゅっと握りしめ、こちらを睨めつけてくる。



『私はクリアリー。この迷宮を作りし者。作法だ、最初に貴様らの目的を聞こうじゃないか』



「だってよ二人とも」



 俺は適当に手を振りながら、二人に話を振る。



「あたしは力を手に入れるため、誰かを助けるためにここにいる」



「私たちは誰かの心に刻まれるために戦っています。だから、強くならなければいけないのです!」



『力を欲するか。まあ、もちろん知ってはいるがな。分かった分かった。前置きはこれくらいでいいだろう』



 そう言うと、クリアリーが針を振るう。


 すると、何もない真っ白な空間に壁が現れた。


 大量の時計で覆われた壁である。


 カチカチと時を刻んでいるそれは、静かな空間ではかなりの音量のように思える。


 それほど場が緊張状態にあるとも言える。



「オシャレなんだな。エルドラの時は真っ白な空間で戦ってたってのに」



 愚痴でも漏らすかのように言うと、クリアリーを顎に手を当てる。


 思い出すかのような素振りを見せて、



『ああ……あいつは適当なところがあるからな。戦闘の興奮、楽しさ、全てを分かっていない。正直言って、私はエルドラが嫌いだ』



「神様同士でも好き嫌いあるんだな。そこら辺は人間と一緒って感じか」



 神々の世界でもそういう好き嫌いがあるって考えると、天国なんて存在するのか疑ってしまう。


 人々は天国があるだなんて信じているが、こうなってくるといよいよ俺も信じられなくなってきた。


 きっと天国でも陰湿なイジメだったりがあるのだろう。


 ああ怖い怖い。


 人間界と変わらないから俺はずっと人間でいたいわ。



『貴様、馬鹿にしているのか?』



「馬鹿にしているって言うか、神様ってのも万能じゃないんだなってな」



『ふむ。神である私を愚弄するか。その点は褒めてやろう。素晴らしい勇気だ。死を恐れていないということだ』



「いや、死ぬのは怖い。絶対に嫌だ」



 俺が全力で首を振ると、クリアリーは疑問符を浮かべる。


 首を傾げて、眉を顰めた。



『ならばなぜ神々である私にそのようなことが言える。普通の人間ならば恐ろしくて言えないはずだ』



 ああ……それはなんだろうな。


 いざ聞かれてみると、ええと、ってなってしまう。


 だってこれが俺の性格だしな。


 性格ってのは根っからのものだから「どうして」と問われても答えに困る。


 まあ……強いて言うならだな。



「暇人だからじゃないか。ほら、暇人って人のそういうところを突くのが好きなんだよ」



 これが俺の答えである。


 というか、俺の行動理由が全て暇だからに詰まっている。



『ふむ。興味深いな。少なくとも、エルドラよりかは気に入った。褒めてやる』



「ありがとさん。神様に褒められて俺は光栄ですよ」



 言いながら、俺は剣に手を置く。



「んじゃ、やりあうか。俺にとっては二回目の神様との戦闘だが、お前にとっては初めての人間との勝負か」



『そうなるな。しっかり楽しませてくれよ、勇気ある人間』



 俺はくすりと笑い、背後の二人に声をかける。


「さあ、戦争のお時間だ」

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