俺もまだまだ若いけどね!
「はぁぁぁぁ!!!!」
その後も現れる木偶の坊を、一気に破壊していく。
ここはこいつがメインに現れる迷宮らしい。
前回の迷宮と違って、なんというかオシャレだ。
エルドラでは既存の魔物がメインの戦闘だったしな。
「あたしも一回やってみてもいい?」
「私もやってみたいです!」
「いいけど、お前ら大丈夫か?」
確かに見ているだけってのは彼女たちにとっては不満くらいあるだろう。
しかし今後の戦闘を鑑みたら仕方がない部分もあると思っているんだけど。
「一気に破壊すればいいんでしょ?」
「ですよね?」
「ああ。まあそうだな」
あいつらは回復能力に長けているが、一気に全てを破壊する攻撃には弱い。
つまり完全な破壊に全身全霊になれば誰だって倒すことができるはずである。
「んじゃ試してみるか――」
瞬時に飛んできた針を俺が破壊する。
「だから、お前話してる時に攻撃してくんな!」
この魔物わざとやっているのか?
それなら本当に鬱陶しいんだけど。
確かに攻撃するチャンスかもしれないぜ。
でもさ、ちょっとは待ってくれてもいいじゃん。
「よし! やるわよ! 《拳銃変形》!」
「任せてください! 《魔力大強化》」
二人はそう言って、攻撃の構えを取る。
リリーはエルドラを倒した時に使った拳銃を変形する技を使っているようだった。
ふと思えば55口径弾丸ってやばいよな。
あんな超火力をよくもまあ両手で支えられるものだ。
多分拳銃自体にも何かしらのバフが付与されているのだろうが。
そして、カレン。
彼女に関しては未知数だ。
《魔力大強化》という技自体も見るのが今回初である。
とりあえず危なそうだから彼女たちの後ろにいるか。
背後で腕組してそれっぽい雰囲気でも出しておこう。
『『『『…………』』』』
複数体現れた木偶の坊がこちらに向かって連続して針を飛ばしてくる。
って、二人ともあの対処できるのか!?
俺は咄嗟に前に出て、飛んできた無数の針を斬り落としていく。
「ありがとう!」
「助かります!」
「いいんだ! これもいい経験だしな!」
にしても、こいつらずっと撃ってくるな。
俺が直接攻撃した方が早いが――経験も大切だ。
俺も色々な人に支えられながら場数を踏んできた。
今度は俺の番である。
「俺のことは気にせず撃て! 気合いで避けるから!」
そう言うと、二人はコクリと頷く。
そして――
「「ブラストォォォ!!」」
高火力な弾丸と魔法弾が一気に発射された。
まさに魔物たちにとっては地獄と言ってもいいだろう。
こんな狭いスペースなんだ。
避けることも抗うこともできない。
俺もちなみにやばかった。
咄嗟に壁に張り付いて、ギリギリのところ回避したのだ。
轟音とともに放たれたそれが、木偶の坊を消し炭にしたのを確認する。
「やりました!!」
「やったわよ!!」
「お前らやるな! やっぱりSランクなだけある!」
少なくともエドやアナにはできない所業だ。
あいつらは少し油断しすぎる節があるからな。
俺は嬉しく思いながら二人の下に戻る……のだが。
――ガシャァァァン!!
遠くの方で、絶対鳴ってはいけない音が鳴った。
多分、二人が放った弾幕が奥へと届いた結果だと思うんだけど。
「迷宮の壁か何かを破壊したのか……?」
迷宮の壁を破壊するって相当だと思うんだけどな。
多分、二人の火力が合わさった結果なんだろうが。
「あたしたち、何かやっちゃいました?」
「やらかしました?」
「ああ……多分やらかしてるわ」
まあ、あんな高火力をぶつけられたらとんでもないだろうしな。
迷宮の壁が悲鳴を上げるのも無理はない。
だが気になることがある。
この時空が歪んだ迷宮。その向こう側には一体何があるのだろうか。
外に出ることになるのか……あるいは階層や場所をスキップすることができるのか。
エルドラでは真っ逆さまに落下したから最下層に行くのは分かるが、一体ここはどうなのか。
「二人共、音がした方に行ってみるか。気になるだろ」
「同じく。行ってみようと思う」
「少し怖いですけど……行く価値はありそうです!」
「満場一致だな」
言いながら、俺たちは前へと進んでいく。
適度に俺が現れた木偶の坊を倒しつつではあるが。
というか、俺への負担が半端じゃないな。
やっぱり少しは手伝ってもらった方がいいかも……。
いや、駄目だ俺。
オッサンとして、先輩として若い子にはいいところを見せないといけない。
若い子にはまだまだ負けない。
俺もまだ若いけどね!
「さっすが!」
「頼りになります!」
うんうん悪い気はしない。
なんかよく考えてみればいい具合に扱われている気もしなくもないけどね。
いや、オッサン別にいいよ。
若い子の役に立てるならいくらでもする。
ほら、よくあるじゃん。
息子や娘に頼られると、お父さんが嬉しくなっちゃうやつ。
多分それだよそれ。
別にそこまで歳は離れていないと思うけどね!
「ここか」
しばらく道なりに進んでいると、彼女たちが破壊したと思われる壁までやってきた。
かなり大きな穴が空いており、彼女たちの破壊力がうかがえる。
「中は……狭い通路だな。とりあえず入ってみるか」
そう言いながら、中に入った瞬間だった。
カチっと音が鳴ったのは。




