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「えいえいおー!」を俺にやらせるのか……?

「時計台とはなぁ。外見に関してはいい趣味してると思うわ今回の神様とやらは」



「迷宮の外見を褒めるの、多分あなたくらいよ」



「いいじゃないか。神様が自分の理想の迷宮を考えながら作ったって考えたら面白いだろ?」



「まあ……確かに面白いけど」



 可愛いじゃないか、と俺は笑う。


 やってることは全く可愛くないんだけどね。


 リレイ男爵領、東の森。


 ここ近辺は案の定、ランクの高い魔物が多く潜んでいるようだった。


 歩いているだけで、近くからも遠くからも視線だったり気配を感じたりする。


 やはり迷宮の影響力は大きいらしい。



 ――シュン!



「おっと」



 突然飛んできた物体に、俺は即座に対応する。


 剣を握りしめ、思い切り叩き切った。



「なになに!?」



「急にどうしました!?」



「いや、なんか飛んできた」



 俺は斬った物体が何だったのかを確認する。


 多分これ、棍棒だな。


 棍棒を投げてくるなんて力任せなことをする魔物なんて数体しか心当たりはない。


 剣を肩に当てて、とんとんとしながら周囲を見渡す。



「出てこいよ。俺が相手してやるからさ」



 俺は生憎と暇人で、こういう嫌がらせを受け入れるのは大得意だ。


 リリーとカレンはひとまず休憩でいいだろう。


 こんなところで消耗するのはあれだし、リリーに関して言えばミスリル合金弾丸を使いすぎるとぶっ倒れる危険性がある。


 どれくらいのスパンで回復するのかは分からないが、先程使ったばかりというのを考えると体力はかなり消耗しているはずだ。


 俺がしばらく待っていると、木々の影から三体の魔物が顔を出す。


 オークオークオーク。


 オーク三昧だな。


 棍棒を投げてきたのは、三体のうち一体だけらしい。


 何も武器を持っていないためか、近くにあった木を折って棍棒代わりにしていた。


 なんて怪力だ。少し燃えてしまうじゃないか。


 オークはこちらに向かって前進してくる。


 俺も倣って、一歩また一歩と近づく。



「さあ来いよBランク。俺がお尻ぺんぺんしてやる」



 挑発と同時に、一体のオークが棍棒を振りかぶる。


 同時に俺は剣を斜めに構えて、受け流す体勢を取った。



 ――ガキン!!



 棍棒と剣がぶつかる。


 ただ、それだと少し戦闘が長引いてしまう。


 それならもっと力任せに、魔力を込めて徹底的に。


 集中――《斬撃強化》。


 剣に魔力を込め、バフを付与する。


 そして、剣に少し力を加えると相手の棍棒が真っ二つに折れた。



「やりー!」



 すかさず、ステップを踏んで前進。


 相手の心臓に向かって剣を放つ。


 蹴りを入れて押し倒し、剣を突き刺す。



 ――ゴォォォォ!!



 残り二体のオークがすかさずこちらに向かって棍棒を振るう。


 確かに今の状況で俺を殴ろうとするのは良い判断だ。


 だけど、俺はそう甘くはない。


 甘く戦闘をするつもりはない。


 剣を引き抜き、左右に薙ぎ払う。


 相手が振りかざして棍棒を見事、俺の剣によって折られた。



「よっと」



 倒れたオークを踏み台に、俺は空中に浮かぶ体を回転させる。


 隣にいた一体のオークに向かって剣を投げ飛ばし、心臓を破壊。


 また隣にいたオークを地面代わりに蹴りを入れ、突き刺さった剣に手を当て止めを刺す。


 引き抜き、最後の一体に向かって剣を放った。



 ――ゴウウ!?



 突刺し、俺はきちんと止めを刺す。


 ふう、と息を吐きながら起き上がった。



「全部倒したぞー」



「なんですか今の! なんか超かっこよかったです!」



「今の動きやばかったわ! 洗練されてるというかなんというか!」



「あまり褒めるなよ。俺を褒めても別に何も出ないから」



「「それでも!」」



 あははは。オッサン、若い子に褒められたらすぐ嬉しくなるからね。


 俺もまだまだやれるんだな。


 現役現役っと。



「んじゃ、『クリアリー』に行くか。あれだろあれ」



 俺は木々の隙間から見える建造物に指を差す。


 そこには大きな塔のような物が見えていた。



「多分あれね。気合い入れるわ」



「入れとけ入れとけ。事前に気合いを入れて損することはない」



「えいえいおー!」



「えいえいおー!」



 二人は肩を並べて、拳を突き上げる。



「えいえいおー!」



「えいえいおー!」



 言いながら、俺のことをじっと見てきている。


 なんだろうなぁ、と思いながら眺めていたのだが、ふと気がつく。



「あれ。もしかして俺もやれって言ってる?」



「当たり前じゃない!」



「気合い入れましょうよ!」



「ええ……俺もうあれだぞ。俺にやらせるのとか地獄でしかないぞ」



 さすがに自分でも分かる。


 もうキツイと。


 躊躇していると、それでもなお二人は攻めてくる。


 顔を近づけてきて、



「やろう!」



「やりましょう!」



 と言ってきた。


 ああもう……ここまでされたら断れねえじゃねえか。



「キツイけど、いいのか?」



「全然キツくないわ! 絶対かっこいいわよ!」



「えいえいおーにカッコいい要素あるのか?」



「ありますあります!」



「……分かった。んじゃ、やるぞ」



 俺は小さく拳を上げ、あまり目立たないように。



「えいえいおー!」



「えいえいおー!」



「えいえいおー!」



 と声を上げた。



「やるじゃない!」



「良かったです!」



「へいへい……」



 ああ恥ずかしい恥ずかしい。


 そんなことを思いながら、時計台へと歩き始めた。

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