敗走(エド視点)
ハイタイガーの討伐。
ランクにしてB相当の魔物である。
「こんなのでお金が貰えるんだから、Sランクは堪らないな!」
「本当にね! 簡単にSランクにも上がれたし、世の中最高!」
二人は依頼書に指定された場所に向かって歩いていた。
場所は王都近郊の森。依頼主は大手商業ギルド。
Sランクということもあって依頼主は大手なことが多い。
更に比較的簡単な依頼でも報酬金ががっぽり貰える。
そのため、二人は心の底から嬉々としていた。
「依頼理由は物資移動の妨げになっているから。これ達成すると、ワンチャンいいアイテム貰えるかもな!」
「それを売ってさらに資金にしましょうよ! 豪華なディナーが食べたいなぁ」
「いいないいな!」
しかし、少しばかり楽観しすぎていた。
ギルドから個人に対してランクが付けられるのは異例のこと。
ケネスはSランクを個人的に与えられ、対して二人は与えられていなかった。
天狗になってしまっていたのだ。
自分たちが誰の存在によって身の丈に合わないパーティランクを与えられていたのか。
それを理解していないのだ。
深い森の中。
木々の音や鳥の声が響くと同時に、何かが近くを動く。
「魔物の気配がするぞ! 狩りのお時間だな!」
ガサガサと草木を駆け巡る音。
二人は背中を合わせて、魔法の準備をした。
「任せて! 一緒に倒しちゃいましょ!」
魔力を体に集中させる――がそれよりも速く魔物が動いた。
――ギシャァァァァァ!!
「なっ!?」
ハイタイガーが茂みの中から姿を現し、エドの方へと飛び込んでくる。
咄嗟に避けようとするが、間に合わずに腕に攻撃が当たった。
地面に転がり、動揺を隠せずに肩で息をする。
「何やってるのよ!」
アナも同様に咄嗟に避ける。
しかし直接攻撃は当たっておらず、バックステップして魔法を放つ準備をしていた。
「相手が速すぎるんだ! クソ、いつもなら魔法を放つ余裕があったのに……!」
お互い、未だに魔法を放てずにいた。
魔法を放つには魔力を集中させることが必須である。
それは練度が高い人間ほど素早く行うことができる。
対して、二人はまだ未熟なのだ。
「相手は三体よ! 間に合うの!?」
「僕たちなら余裕だ!」
どうにかエドは起き上がって再度魔法を放つ準備をする。
先程まで魔力を集中させていたこともあり、今度は相手よりも速く攻撃する準備ができた。
「当たれ!!」
エドは動き回るハイタイガーに向かって何度も魔法弾を放つ。
しかしあまりにも相手の素早さが上すぎた。
当たったのはたったの二発。
それも怯んだ様子は一切見せていなかった。
「当たってよ!」
アナも倣って攻撃する。
しかし三体のハイタイガーは二人を翻弄するかのように動き回る。
二人にとってはさながら音速のようにも思えた。
それほどまでに、攻撃が当たらない。
「いつもなら余裕なのに……!」
二人の口からは『いつもなら』という言葉が何度も漏れた。
しかし、なぜ自分たちが『いつもなら』と言っているのかは理解していない。
ただ、『いつもより不調』だと思っているのだ。
二人は態勢を整えるために周囲の状況を確認する。
ここは森の中。茂みが生い茂り、視界は悪い。
相手は三体。それもかなりの速度を持っている。
更に言えば、攻撃はほとんど通っていない。
「やばいかもしれない……」
「何言ってるのよ! これくらいで失敗したら大恥よ!」
「分かってるさ! そんなの僕だって分かっている!」
大丈夫。
自分たちはSランクパーティ。
誰もが憧れ、羨み、手を伸ばしたがる最高ランク。
これくらいで倒れるわけがない。
「考えろ……! 考えるんだ……!」
思考をどうにか巡らせる。
一秒一秒が何十分かのように思えた。
だが――答えは出ない。
なんせ今までこれでやってきたのだ。
いつも通りなら上手く行っていたのだ。
「あがっ!!」
再度ハイタイガーからの攻撃が飛んでくる。
呆然としていたため、避けることができずにもろに喰らってしまった。
大きな怪我をしているわけではないが、足の捻挫をしてしまったらしい。
痛む足を押さえながら、舌打ちする。
「……僕のプライドが!」
「エド! もうここは駄目よ! 退きましょう!」
「何言ってるんだ! ここで退いたら依頼が!」
「これで万が一のことがあったら不味いでしょ! 依頼に関しては適当に言い訳でもしてさ!」
「……クソ!!」
どうにか一瞬でもいいから動けるよう、足に軽い治癒魔法を施す。
そして、Sランクパーティがたったの『Bランク』の魔物から敗走した。
現在、皆様の応援のおかげでランキング上位で戦えております。これもひとえに皆様の力があったからこそです。本当にありがとうございます!
少しでも面白い、続きが読みたいと思ってくださった方は【広告下にあります☆☆☆☆☆をタップして★★★★★に染めて応援していただけると嬉しいです!】
星をタップしてMAXにするだけで一人当たり10pt入ります。これがかなり大きいのです!作者のモチベーションに関わってきますので、執筆を応援すると思って評価していただけると助かります!
画面上にありますブックマークと一緒に、何卒応援していただけると嬉しいです!死ぬ気で皆様の期待に答えるよう、更新致します!ぜひ、よろしくお願いします!




