空を飛ぶ
いつからだろう…空を見上げるのは。
いつからだろう…空を飛ぶのは。
いつからだろう…空を感じるのは。
いつからだろう…全てがわかるのは。
自分のために開かれたパーティー。
そこで我慢をいう女の子。
時間を作ってわざわざ来てくれた皆を白けさせてはいけないから、その子にだけ構うわけにはいかなくて。
主催してくれた方の意図的な無関心に感謝しつつも、無言のプレッシャーに辟易し、我儘を言っていた子には事情を諭す。
やれやれと思いながら部屋に戻ると、そこは学校で、昔、過ごしたクラスだった。
適当な場所に座ると女の子が目の前に座って言った。
「誰にでも『結婚しよう?』っていうからだよ。」
そう言って笑っていた。
そういえばこの子にも言ったっけ?
でもこの女の子はにこにこ笑ってる。
自分の席はどこだっけ?
ああ、後ろの席、窓から3番目。
この席、こんなに最高だったかな?
席には誰か座っていたけど、普通に譲ってくれた。わからないことがあったら聞いて。そんなこと言われた。
机の中には自分の私物。
未来から戻ってきたことを隠さなくては。
何枚か新聞が入っていて、未来の日付のものを隠さないと面倒なことになるなと思いながら、新聞の日付を確認する。
だけど、未来の日付の新聞は見当たらない。
いつの間にか教室に入っていた先生が話し始める。
この辺りにはいろんなことがあるのだと。
この世界はとても不思議なのだと。
こんな話、昔聞いたかな?と不思議に思う。
春になると牧場では牛乳が取れ始め、
秋になると河馬が相手を探し始める。
そんな話。
ふと、さっきの女の子を見ると先生の話を聞きながら談笑していた。
あの子と同じクラスだったのって、こんな気分だったのかと今更思う。
今日はどうやって学校に来たんだっけ?
ああ、そうだ。
建物の間を通ってきた。
大きな、広い敷地の建物の間を。
そこには河馬とか猿がいて、道路の向こうは牧場だったんだな。
その間を、空を飛ぶように来たんだった。
みんな誰もそんな風に飛べなくて、目立たぬようにそこを通ったんだった。
だけどいつの間にか、そういう事ができるのが、なんとなくいろんな人にばれて、さっきの女の子もその1人だった。
飛びながら下を見ると、動物達が何をしているのかよくわかった。
ぼんやりとそれを眺めながら、相変わらず他人にはできないやり方でいろんなもの見ていた。
いつだったかそこを通っていることを誰かに話すと、どうやって通ったのかと聞かれた事があった。
だから、手伝いをして通してもらったと適当なことを言ったら、
あの重い三角を運んだのか?
と聞かれた。
何のことこ分からなかったけど、そうだと応えておいた。
そのうち、そこにいる人達が奇妙な三角形の重たいものを運んでいるのを思い出した。
そして、いつだったかそれを運んだことも。
誰よりも上手にそれを運び終え、その人達に賞賛されたことも。
そういえば、それから通るようになったんだっけ。
そこにいる動物たちの行動は、先生が話していたように時間を追う毎に変化して、それはとても奇妙に映ることもあったけど、ぼんやり空からそれを眺めながら、相変わらず過ごしていた。
そんな時か、1人の子に出会ったのは。
その子はやたらとこっちを気にしていて、何をしたいのかよくわからなかったけど、どうやら自分と一緒にいたいらしかった。
あの女の子にまた何かを言われるだろうか?
その子はいろんなところで見かけたけれど、ある時、その子が友達と話していたのを見てしまった。
「どうやって、好きだって言ってもらおうか?」
その子の友達がそんなことを言っていた。
その子の名前は?何だっけ?
不思議な話をしている友達と、それに頷いているその子を見て、名前を思い出した。
「ーーーー。」
その名前は、その世界では真実の愛を意味していた。
その名前を思い出した時、僕はその子の方に向かって歩き出して、手を掴んだ。
友達もその子もすごくビックリしていたけど、自分の方が驚いた。
さらに驚いたことに、自分はその子にこう言った。
「やっと見つけた。」




