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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十二章-友
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復讐

 ミナトは、エレナへそっとグラスを差し出した。

 グラスには琥珀色の液体が注がれており、特有の香りが漂っている。


「ありがとう、ミーナ。」


 エレナは感謝の言葉と共にそのグラスを受け取り、わずかに口をつける。

 ミナトもまた、もう一つのグラスに口をつけ、そっとエレナに語りかけた。


「大丈夫? 落ち着いた?」


「ええ。もう平気。

 でも我が身となると、ようやく解ってくるわね。教授の気持ちも。」


「どういうこと?」


「命を狙われるっていう恐怖よ。

 あなたたちがいてくれるのは心強いけど、それでも不安は拭い切れない……。」


「大丈夫です。」


 空間から、スウッとコムが姿を現した。


「僕のフィールドを貫ける魔法は存在しません。

 まして物理攻撃なんか全部弾いてやりますよ。」


 エレナはコムのこの言葉に苦笑しつつ、また少しグラスに口をつけた。


「でも、こんな復讐なんて絶対によくない……。」


 ミナトがポツリとつぶやいた。


「確かにあたしの言えた義理じゃないけど、そんな……本人に気持ちをぶつけない復讐なんてあっちゃいけないよ……。」


「自己満足……か。」


「え?」


「あの女の言った言葉よ。

 確かに死んだ人間のために復讐しても、向こうが喜ぶかどうかなんて解りっこないわ。

 でも、本人には何かを成したという達成感は残る。

 それが仇討ちと言う行為の本質よね。」


「そうだね……あたしはそれにギリギリで気づくことができた。

 あの人が命を賭けてあたしの相手をしてくれたから、気づくことができた。」


 ミナトがまた一口、グラスのウィスキーを口にする。


「私はそんな真似はできないわよ?

 自分の身を守るのが関の山。相手を諭すつもりもないわ。

 大体あの女は自分の行為の意味を知り、理解した上で私を襲うんだから、こちらの言葉に耳なんて貸すはずがないし、ね。」


 それだけ言うと、エレナは少し多めにウィスキーを喉へと流し込んだ。


「さ、寝ましょう?

 じゃあ、お坊ちゃん。警戒よろしくね?」


「ですから、その呼び方やめてくださいよ。」


 夜が更けていく。


 エレナとミナトは各々のベッドに潜り込み、やがて静かな寝息を立て始めた。


 コムも警戒を続けたまま、省エネルギーモードへと遷移し、部屋には、外の雑踏の音のみが響くようになっていった。


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