合流
警備隊の詰所、その奥から出てきた二人を、ミナトとエレナが待っていた。
様々な窓口の向こうにある部隊長の執務室では、隠しきれない怒号がガンガンと漏れ聞こえてくる。
恐らく件の三人が、今回の件で徹底的に絞られているのだろう。
それをどこ吹く風と聞き流しつつ、レオンハルトはエレナに言った。
「支部の通信網のおかげだな。
結局どこまで報告したんだ?」
「もちろん学院長まで。
即座に手配するって言ってたから、軍内部の直通回線が利用されたのね。
ここの部長さん青褪めてたわ。」
スッとしたという表情でエレナは語る。
一方でミナトは、同行しているヒュウガを不思議そうな顔で見つめている。
「ねぇ、ヒュウガ。どうしてあんたがいるのさ?」
「教授の件でちょいと、な。
手伝いはするが、邪魔はしねぇよ。」
にこやかに微笑むヒュウガに、不機嫌さを露わにしてエレナが詰め寄った。
「信用できないわね。
あの時あなた、私に手を上げたじゃないの。」
「アレは謝る。ポリシー曲げたのは、本気で悪かったと思ってる。
詫び代わりに情報を一つ提供するぜ?」
「情報? なによ?」
「お前ぇさん、命狙われてるぞ。
あのシュヴァルベとかいう黒づくめの女にな。」
「私が? どうして?」
「そこまでは知らん。
だが、俺がここにきてお前さんと会った、そのことは向こうに伝わっているだろうし、近く『転移』でやってきて、命を狙うだろう。
それだけは警告しておく。」
ヒュウガの言葉に困惑の表情を見せる三人。
しばし顔を見合わせた後、レオンハルトが口を開いた。
「ヒュウガ、それはどういう事だ?
順を追って説明してくれ。」
「ああ……そうだな。
まずはどこか宿屋まで行こうぜ。話はそこの方がいい。」
いつの間にか怒号は治まっていた。
だが、執務室をちらちら見やる職員の数は増える一方にしか見えなかった。




