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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十二章-友
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謝罪

 警備隊の応接室にレオンハルトは通された。

 件の三人の顔は、悲痛なまでに青褪め切っている。


「いつまでいるんだ? 手前ぇら。」


「は……取り調べでしたら、ご同席できれば、と……、」


 ヒュウガは大きくかぶりを振って、三人に告げる。


「取り調べじゃねぇよ。情報提供をお願いするんだ。

 いいか、繰り返し言うぞ。

『お願い』だ。あちらにお頼みするんだよ。

 わかったら失せな。」


「そ、それでしたら、最高級のウィスキーがそちらの戸棚に……。」


 その言葉が言い終わるか否かのタイミングで、苦虫を噛み潰したような顔でヒュウガが口を挟んだ。


「いいか? 手前ぇら既に軍法会議モンの失敗してるんだ。

 これ以上俺の心証悪くしたら、本気(マジ)で吊るすぞ?」


 ヒュウガの放った最後の一睨みを受け、三人はすごすごと部屋から出て行った。


 それを見たヒュウガは、最敬礼の上、レオンハルトに上座への着座を勧めた。

 勧められるまま着座するレオンハルトを見たヒュウガもまた、対面のソファへと着座する。


 落ち着いた頃合いを見計らい、ヒュウガが口を開いた。


「俺の不手際だ。容赦してくれとは言わん。

 だが情報だけはいただきたい。

 身勝手だが、頼む。」


 ヒュウガは深く頭を下げ、レオンハルトに頼み込む。


 彼の頭の上から、レオンハルトの小さな笑い声が聞こえてきた。

 顔を上げるヒュウガの前には、苦笑するレオンハルトの顔があった。


「不当な扱いには慣れている。

 別に気にしちゃいない。」


 今度は、その言葉を聞いたヒュウガが苦笑する。


「相変わらずの皮肉屋だな。お前ぇも。」


 お互いの頬が綻び、わずかだが温かい雰囲気が漂った。


 だが、次の瞬間、双方の顔が引き締まり、本題へと入っていく。


「教授の件だな。」


「ああ、ヤツは本当に死んだのか?」


「死んだ。あの場所に彼奴の死体が転がっていたのは間違いない。」


「くどいようだが、本当に死んだと、そう言い切れるんだな?」


「少なくとも、あの場所に彼奴自身の死体はあったとまでしか言えんな。」


「含みがあるじゃねぇか?」


 ヒュウガの言葉を最後に、一旦言葉が途切れた。


 レオンハルトは瞳を閉じ、ゆっくりと口を開いた。


「一つ考えたくない推測がある。」


「どんなモンなんだ?」


「戦闘用の人形(ひとがた)に、彼奴自身の記憶、意識、そして思考を移し替えて復活したという可能性だ。

 正直、涜神的な研究の結果ともいえる。

 これが実現していたとしたら、彼奴を止めるためにはかなりの犠牲が必要になりかねん。」


 レオンハルトの真剣な眼差しを見たヒュウガは、何も言わず口に手を当てた。


「無論これは俺の推測にすぎん。

 だが、状況証拠はかなり揃っているとも思える。

 実際お前も、教授生存の恐れがあるから行動してるんじゃないのか?」


「確かにな……。」


 口に手を当てたまま、ヒュウガはレオンハルトの言葉に考えを巡らせた。


 教授の死、そして復活。

 果たしてそれが、どこまで信憑性のある話なのか、それを考える。


 熟考……。


 やがて考えのまとまったヒュウガは、おもむろに口を開いた。


「わかった。

 お前ぇの今回の調査行、俺も同行する。」


「どういう風の吹き回しだ?」


「どうも今回の件、お前ぇが鍵になりそうだ。

 なんか全部、お前ぇを中心に回ってる雰囲気がある。

 そんな臭いがするのさ。」


 ニヤリと笑いながら語るヒュウガに、レオンハルトは苦笑で答えた。

 だが、その内側にある安堵もまた、苦笑の中に見え隠れしている。


 お互いに心の整理がついたところで、改めてヒュウガが口を開いた。


「さて、そうなると色々と情報交換が必要だな。」


「どこまで明かしてもらえる?」


「大まかなところまでさ。

 と言っても、コッチの知っていることはお前ぇさんとどっこいだ。」


 ヒュウガは立ち上がり、大きく伸びをする。

 その後、思い出したかのように、ポツリと言った。


「そうだ、片づけなきゃならん問題もあったな……。」


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