拘束
「いったいどういうことさ!?
レオンを拘束するって!!」
怒号一声。ミナトが声を荒げる。相手はグレッツノーストの警備兵二人だ。
「知るか! 上からの伝達だ!
関所を通過しようとする学術師、レオンハルト・フォーゲルを拘束するよう命令が出ている!」
警備兵はいかにも傲慢な態度で三人に怒鳴り返す。
それに対し、うんざりした声でエレナが尋ねた。
「その命令を下したのはどなた?
悪いけど、その人、首が飛ぶかもよ?
比喩や地位的な話ではなく、文字通りに。」
「どういうことだ?」
「今回我々は大公の命で行動しているわ。
その妨害を行えば、それなりの処置が執られる。
手形を見れば解るでしょう?」
警備兵を挑むような視線で睨みつけるエレナ。
怯みを見せた警備兵に向け、レオンハルトが一歩前に進み出た。
「行くなら同行しよう。
拘束でもなんでもすればいい。」
「「レオン!!」」
ミナトとエレナが同時に叫ぶ。
当然だろう。この状態での彼の行為に同意する人間はいない。
それを見た警備兵は、一瞬呆気に取られたものの、すぐに見下すような笑いを見せ、レオンハルトに手錠をかけた。
「聞けば貴様、魔導士だそうじゃないか?
手向かいしたらその場で斬り殺すから覚悟しておけ。」
レオンハルトは無表情のまま、唯々諾々と手錠を受ける。
そんな彼に向けて、心配そうな声でミナトが声をかけた。
「レオン……。」
「大丈夫だ、ミーナ。問題ない。
エレナ、上への報告は頼む。
場合によっては学院長にまで話を通してくれ。」
「解ったわ。」
険しい視線を警備兵に向けたまま、エレナは答える。
耳に煌めくイヤリングも、彼女の怒りを受けたかのような輝きを見せた。
「ま、何をしでかしたかは知らんが、なんせ魔導士だ。きっととんでもないことをやらかしたんだろうよ。
じゃあな、美人さんたち。
おい貴様! キッチリ絞ってやるからありがたく思えよ!」
手錠に腰紐……完全に犯罪者の体で引き連れられていくレオンハルトに、ミナトとエレナは視線を送る。
片や心配そうな、心細そうな視線を。
片や怒りに燃えた視線を。