娼窟
「ありゃあ、何だい?」
深夜。
売春宿の一室で、グラスを片手に半裸のヒュウガが外の様子を窺っている。
外では市場の裏口から、次々と荷物が運び出されているのが見て取れた。
「ああ、アレ? 引っ越しさ。
なんでもアルバーンのお殿様が、遺跡に立てこもる腹らしいよ?」
気だるげに煙管をふかしながら答えるのは、ロングの髪にウェーブをかけた見目麗しい娼婦。
恐らくは一戦交えた後なのだろう。
シーツには体のラインがくっきり現れている。
ベッドに腰かけつつ、ヒュウガはさらに尋ねた。
「へぇ……そりゃどうしてだ?」
「噂じゃオルセンのお殿様と同じ目に遭いたくないってことらしいけどね……。
詳しいことはよくわかんない。」
「なるほどな。
どこの遺跡……までは、さすがにわかんねぇか……。」
「その辺は情報屋にでも聞いてくれないかい?
それにしてもアンタ、ヤバい香りがするね。
軍人か、ヤクザ者か……でも、ま、どっちにしても悪くないよ。」
「そうかい?」
「ああ。いい男だよ、アンタ。
今夜は一晩付き合ったげる。嫌なことなんか忘れさせてあげるからさ。」
娼婦はそう言うと、ヒュウガの首に腕を回し、口に軽くキスをした。
ヒュウガもそれに応え、シーツの中に身体を滑り込ませる。
外では荷物を搬送する者たちの怒号が響き、辺りを険悪な雰囲気に変えていた。