『轟雷』
階段をさらに下へと進む。
頭上からは相変わらず、カシャリ……カシャリ……と、機械たちの足音が聞こえてくる。
まるで階下に追いつめるかのような、そんな足音を耳にしながら、四人は下層へと進んでいく。
ミナトもエレナも、かなりの緊張を感じているのだろう。脂汗をかきながら階段を下りている。
地下三階。
一直線の廊下の向こう側に、一際大きな左右開きの扉が見えた。
「あれが管理室だな。」
レオンハルトがそう言って、前に進もうとしたその時、背後の階段を警護ロボットが一気に駆け下りてきた。
一体、二体……計六体。
「二人とも扉へ走れ!
コム! 護衛は任せる!!」
「レオンはどうすんの!?」
「お察しなさい!
魔法の出番よ!!」
三人の声が入り乱れて廊下に響く。
レオンハルトは瞬時に『防壁』の魔法を準備、警備ロボットの銃弾に備えた。
ミナトとエレナが扉の前まで到着したのを確認し、再びコムに命令を下す。
「コム! 障壁は最大出力だ!
衝撃波も通すな!!」
「了解しました。」
軽く開いた右手を水平に上げ、前へと突き出すレオンハルト。
集中――淡い光の点が、掌の数十クラン先に輝いた。
展開――魔導球が蒼く輝き、一気に膨張する。
抽出――魔導球内に輝く幾何学模様が複雑に変化しつつ、輝きが増していく。
収斂――魔導球は一気に一点へと集中し、輝きが極限まで高まった。
そして発動。
青白い数多の雷光が魔導球のあった点から迸り、続いて大轟音が廊下の中に響き渡る。
高位魔法『轟雷』。
爆発的な超高電圧の雷撃を受けた警備ロボットたちは、一瞬の後に煙を上げる鉄屑へと姿を変えていた。
「凄い……。」
驚きのあまり声を出すことすらできないミナトを見て、エレナは密かに語りかけてきた。
「あれが魔導士よ。
こんな業を見せられたら、恐れて当然だと思わない?」
「そうかもしれない……。
でも……。」
「でも?」
「あの人は大丈夫だ……って、そんな気がするんだ。」
「そう……。
その感情は大事になさい。
きっと彼にも通じるわ。」
エレナはそれだけ言うと、ミナトにそっと微笑みかける。
そしてミナトは、近づいてくるレオンハルトを、憧れを込めた眼差しで見つめていた。