表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十一章-遺跡
85/171

魔導士

「本当にとんでもないわね。二人とも。」


 残骸をまたぎながら、呆れたような声でエレナはレオンハルトとミナトに声をかけた。


「数分であの機械十数体を黙らせるなんて、人間離れもいいところだわ。」


 レオンハルトはため息をついて、小さくかぶりを振った。


「またその言い方か。

 防衛機構を力ずくで黙らせると、いつもそんなことを言ってくるな。」


 続いてミナトも不満そうな表情で口を開く。


「でも、かかる時間は短い方がいいんでしょ?

 そんな嫌味、いう事ないじゃない。」


 二人の言葉にエレナが答えた。


「気に障ったら謝るわ。

 でも、やはり魔法使いは恐れられて当然だと思うのよ。

 あんな肉を抉る銃弾の嵐の中を潜り抜けて、金属の怪物を屠っていくなんていうような真似は、常人からすれば狂気の沙汰よ?」


「そうかもしれん。

 だからこそ、魔法使いは自らを律するのさ。人間として生きていくためにな。

 君の父君もそうだったろう?」


「確かにね……。」


 寂しげに目を逸らすエレナを見て、ミナトがレオンハルトにそっと尋ねる。


「エレナの……お父さんって?」


「エレナ、いいか?」


 レオンハルトの問いに、物も言わず小さく頷くエレナ。

 それを見たレオンハルトは静かに語る。


「エレナの父親はユリウス・リーマンという偉大な魔導士だ。

 俺など足元にも及ばないほどのな。」


「謙遜ね。」


 エレナは苦笑いを見せながら、レオンハルトの言葉に続いた。


「父は、かつてリューガー家お抱えの魔法使いだったわ。

 人格者で、優しい人だった。

 けど、やはり私にとっては得体の知れない恐ろしい人だったのよ。」


 ミナトがかなりの長い逡巡を見せた末に何かを言おうとしたが、それを押しとどめるような強い声でエレナが再び口を開く。


「さあ、下らない話はおしまい!

 そろそろ動かないと他の機械がやってくるんじゃなくて?

 そうでしょう、コム。」


「はい。現在上階から六体の警備ロボットが接近しています。

 ただ、今は飽くまでも警戒モードのため移動速度はゆっくりですが、こちらに気取られたら、一気に戦闘モードなのは間違いないです。」


「下の階には警護はいないんだな?」


「いません。

 現在の状況においても動体反応はゼロです。」


 コムに短く質問したレオンハルトは、即座に考えをまとめる。


「とにかく下だ。

 管理室を押さえれば警護の機械を眠らせることもできる。

 急ぐぞ。」


 その言葉を聞いた三人は小走りで目の前の階段へ向かう。

 彼らの頭上では、かすかにカシャリ……カシャリ……という、金属のこすれ合うような音が響いていた、


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ