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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第十一章-遺跡
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入口

 遺跡の扉は既に解錠されていた。

 多くの泥のついた足跡が、入り口付近を茶色く汚している。


「かなりの人数が出入りしているわね。」


 足跡を見たエレナがボソリと言った。


「じゃあ、急がないと!」


「いや、慌てる必要はない。」


 慌てるミナトに、レオンハルトは冷静に答えた。


 不満げな視線をミナトはレオンハルトへ向ける。

 その視線と自らの目を真っ向から合わせ、レオンハルトは口を開いた。


「よく考えるんだ。

 今のところ、俺たちの背後を取る連中はいない。ゆえに入り口の鍵をかけ、外部から増援が侵入しないようにできれば、遺跡の中にいる連中は孤立させられる。

 連中が何を目的としていても、遺跡から脱出できない以上、どんな計画だろうと絵に描いた餅に過ぎなくなるだろう?」


「でも、数の上では不利な可能性が高いよ?」


「遺跡の狭い通路で戦えば、数の有利は不利に変わる。

 背後を取られなければ、有利なのは間違いない。

 増援がないことが解っていれば、なおの事だ。」


 レオンハルトの言葉を聞き、不服そうな表情で考え込むミナト。

 エレナは、そんな彼女に優しく語りかけた。


「急ぐ必要はある。でも慌てちゃダメよ?

 さっきのあなたはその辺が危なっかしかったように見えるわ。」


「うん……。」


 エレナの指摘に納得の声が漏れるミナト。

 エレナは微笑んで言葉を繋げる。


「彼ったら口が悪いから、優しく言えないのが短所なのよね。

 ほんと、説教臭いのは勘弁してもらいたいわ。」


 ため息をつくエレナの様子を見て、ミナトもつられて苦笑いをする。


 そんな二人の様子から目を背けて、レオンハルトはコムに指示を出していた。


「コム。遺跡の中の走査(スキャン)だ。

 特に動体反応を重点的に頼む。」


「了解です。」


 コムの目がチカリチカリと光る。


 数秒の後、コムが作業完了の旨を告げた。


「遺跡内の動体反応は、現在の所ゼロ。

 遺跡全体での局所的な温度変化もプラスマイナス三度。

 生物が潜んでいる可能性は非常に低いと考えられます。」


「そうか……。」


 思考を巡らすレオンハルトの脇から、エレナが口を挟んだ。


「コム、防衛装置の可能性は?」


「著しく高いと考えられます。」


「決まりじゃない? レオン。」


「そうだな。ここであれこれ考えていても仕方ない。

 突入し、まずは管理室を押さえる。」


 レオンハルトの力強い視線がドアに向けられ、その横にあるパネルに手が伸ばされた。


 音もなく、自動で開くドアに、ミナトが仰天する。


「これ……今、勝手に……。」


「遺跡のドアは大体こんな感じ。

 これで驚いていたら心臓がもたなくてよ。」


 にこやかに語るエレナは、イヤリングを揺らして遺跡へと入っていく。


 一方、ミナトはただ呆然とドアを見つめ、なかなか一歩が踏み出せずにいた。


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