夜襲
月明り煌々たる夜。
クロウフから数ロークラム離れた洞窟にて戦闘があった。
片やオルセンの私兵たち。
片や覆面と黒づくめの鎧に身を固めた謎の兵たち。
戦いは一瞬で片が付いた、
エレナの読み通り、傭兵中心の私兵は早い段階で戦意を喪失。
投降どころか、算を乱しての逃走を始めたのだ。
「無様な物だな。」
小隊を率いる隊長らしき男が言う。
「全く。数で有利にも関わらず逃げ腰になるとは。」
副官なのだろう。その言葉に相槌を打った男がいた。
森の奥から兵が一人駆けてきた。
「逃走した兵は全員始末しました。
現在隠滅作業の最中です。」
見れば、報告を行った兵にはかなりの返り血が付いている。
それなりに人を斬ったという明確な証拠だろう。
再び森の中へ向かう兵を見つめ、副官が言った。
「あの暗殺も、『アレ』の仕業でしょうか?」
「そう考えていいだろう。
本当に教授は見事な置き土産を置いていってくれたものだ。」
感心したように隊長が答える。
彼は、今斬り斃した兵たちを弔うかのように剣を捧げ、こうつぶやいた。
「姫君のために。」
「はっ、姫君のために。」
副官もまた、隊長と同じく剣を捧げ、同じ言葉を復唱する。
森のあちこちで土を掘り返す音がかすかに聞こえてきた。
彼らの守っていた洞窟。
その奥には旧世紀の遺跡が眠っていた。
だた沈黙を守り続けて。




