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学術師 レオンハルト ~人形(ひとがた)たちの宴~  作者: 十万里淳平
第七章-二人
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秘匿

「いやはや、同棲とは……。

 やるわねぇ、あなたも。」


 底意地の悪さを秘めたニコニコ顔で、レオンハルトをからかうエレナ。

 対するレオンハルトの視線は、相変わらず端末の画面に釘付けだ。


 しばらくしてノックが響き、お茶の用意をしたミナトが書斎に入ってきた。


「あら、お構いなく。」


 微笑んでミナトに挨拶を投げかけるエレナに、ミナトは不機嫌さを露わにして答えた。


「いいえ、どうぞごゆっくり!」


 書斎のドアが、やや乱暴に閉じられたのを見て、エレナは苦笑しながらレオンハルトに言った。


「嫌われちゃったかな?」


「悪いが、そんなことはどうでもいい。

 問題はこの発掘の情報だ。」


「何が問題なの?」


 その真剣な表情に顔を引き締めたエレナが、レオンハルトの横に立つ。


「これだ。この三番の遺跡になる。

 この遺跡、ほぼ間違いなく熱線砲か、またはそれに類する何かを見つけたと考えられる。」


「中身は確認できない?」


「ここにある情報のみでは推測すらできん。

 恐らく、この情報を取り扱う専用の『回路』があったはずだが、火災現場から掘り出すのは一苦労だろうな。」


 端末を操作するレオンハルトの横で、エレナは何かを考えこむ。


 不意に彼女が口を開いた。


「ごめんなさい。もう一度、三番の遺跡を見せて頂戴。」


 レオンハルトは無言で端末を操作し、エレナの要求に応える。


 エレナはその情報を食い入るように確認し、改めて口を開いた。


「これ、教授の端末に情報の一部があったわ。」


「間違いないか?」


「ええ。ただ、どんなものが埋まっていたのかまでは明らかじゃなかったけど。

 でも間違いなく、これに関する情報よ。」


「じゃあ、そこから取り掛かるか……。」


 レオンハルトは椅子から立ち上がると、来客用のテーブルに置かれた紅茶をカップに注ぎ、一啜りした。

 やや冷めてしまってはいたものの、まだかぐわしい香りで一杯だったのは、ミナトがそう言った通りに、精一杯美味しく淹れてくれたからだろう。


 少し前の苛立ちが嘘のように静まり、冷静な考えができるようになってきた。


「時にレオン。

 三番っていう事は他にも遺跡は最低二つあるってことよね?」


 エレナがそばに寄ってきて、一緒に紅茶を飲む。

 レオンハルトは、そんな彼女の方に顔を向けることなく、紅茶をもう一口飲み、静かに答えた。


「そうなるな。

 どちらも熱線砲ほどではないにせよ、何か重要な物が埋まっているようではある。

 いずれにしても、何らかの形で調査に行かねばならん。

 それも早急に。」


「久しぶりのフィールドワークね。

 頑張って行ってらっしゃい。」


 レオンハルトの言葉を聞いて、微笑みながら手を振るエレナ。

 だが、レオンハルトはそれに取り合うことなく言葉を続けた。


「君にも手伝ってもらう予定だぞ、エレナ。

 まずは学院長へ今日中に報告し、裁断を仰ぐ。

 遅くとも今月中には旅の空だ。

 今日は帰って旅装を検めておいた方がいい。」


「本当、冗談がきついわね……。」


 レオンハルトの真剣な目に、エレナもまたつられて真剣な眼差しになる。


 エレナは真剣な表情を崩すことなく、そのままレオンハルト邸を後にした。


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